昨年、私はエンロンの取材でテキサス州ヒューストンに行きました。
石油の街、ヒューストン!そこはまさにブッシュの街!
と言いたいところなのですが、はっきりいえばテキサスは超田舎でした。
今年の秋にも米国取材があり、初めてケンタッキーにいきました。ケンタッキーといえば「フライドチキン」というのは日本人だけで、実際にケンタッキーに行ってみると、カーネルサンダース人形はどこにもなく、そこは「馬」と「たばこ農園」の街でした。ケンタッキーの州都であるフランクフォートのダウンタウンはきれいな街でしたが、とにかく小さくて、車で移動すると1周するのに5分もかかりません。郊外は行けども行けども緑、緑、緑。ブルーグラス地方とはよく言ったものです。車窓から見える景色は100%牧場で、サラブレッドがのんびりと草を食んでいるというのがケンタッキーでした。
ハリウッド映画の中のアメリカは幻想。
壮大な田舎。行けども行けども田舎。これこそが実のアメリカなのです。
前回の大統領選でブッシュが勝利したことが日本人にはなかなか理解できませんが、理解できない理由の大きな要因のひとつは、アメリカ社会に対する認識の不足もあると私は考えています。ニューヨークを中心とした東部、ロスを中心とした西海岸は教育レベルが高いことで知られていますが、そこでは圧倒的にケリーが優勢でした。イラク戦争の正当性に対する日本人の感覚は、その人たちととても近いものがあります。ところが米国の大半はテキサスやケンタッキーに象徴される「田舎」です。人口の大半はそこにいます。田舎に行けばいくほど政治的には保守的になるのは日本と同じです。国の財政赤字がいくら膨もうと、そんなことはおかまいなしに「我が県の経済は公共工事で支えられているのだから、もっと工事をよこせ」というあの感覚です。しかも、国際社会の中でのアメリカの立場とか、世界からどう見られているかとか、自分の国を客観視するような、そんな情報もどこにもありません。
我が師匠の出演番組、サンデープロジェクトで米国大統領選挙を長期間にわたって取材したディレクターの話を聞いても、田舎はみな、投票日前から圧倒的にブッシュ支持でだったそうです。「テロと戦うブッシュ大統領は正しい」という視野の狭さもありますが、それ以上に、米国の保守的な人々が今回の選挙でも関心をもったのは、なんと「中絶」の是非だったというのです。
ブッシュはキリスト教原理主義者として知られており、妊娠中絶は絶対に許さないというスタンスを明確にしてきました。同性愛者どうしの結婚についてもNOを明確にしていました。ところがケリーは賛成とは言いませんが、反対はしないという態度。つまり、米国の大半を占める田舎では、イラク問題よりも中絶問題の方が大きな争点になってしまったように思えた、と取材の感想を漏らしていました。
ブッシュ、うまいですね、当てにならない浮動票の頼りにするのではなく、保守的な田舎の米国人に向って「中絶反対」を叫び続けることで、キリスト教徒の票を掘り起こすという作戦がまんまと功を奏したというわけです。
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