(3/3)
『A靴店の悲劇』
A靴店も例にもれず、30坪に満たない売場面積でありながら、履物なら全て置くといった形でベビーシューズから葬式用の白鼻緒の草履まで、まさにゆりかごから墓場までといった品揃えであった。いわゆる、靴・履物総合店であり、靴・履物なら何でもある店である。
そのA店からコンサルテイングを依頼され出向いて話を聞いているとき、店主が「先生、ウチは靴履物なら何でもあるよ、貴方も紳士だろう、ウチには紳士靴もあるから買ってくれ」というのである。筆者が紳士であるかどうかは別にして、私は「紳士靴なら持っているからいりませんよ」とこたえた。
当時、私はある有名ブランドのコンサルタントをしており、趣味的に合うこともあり、服は上からしたまで同ブランドでまとめていた、しかし、残念なことに同ブランドでは靴だけはライセンス生産も輸入も行っておらず、国内では手に入り難かった。
だから私は何でもあると言うその店主に「紳士靴は要らないが、そのブランドの靴があれば欲しい」と言ったのだが、そのブランドの靴は無かった。
A靴店は「靴履物なら何でもあるのに、客が欲しい靴は無い」といった状況で、在庫は3000万円(売価)もあるのに売上は1000万円/年商を切っていた。
金の回らない状況になっており、来月と再来月の手形が不渡りになるのは明らかだった。不渡りが二回続けば銀行取引停止となり倒産は必至である。
最早どうにもならない、こうした事態に追い込まれ倒産・廃業に至った靴・履物店は少なくない。さて、A靴店に倒産回避の手はあるのか?
この項次号に続く。
←前のページへ 1/2/3
|