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一年ぶりに訪れた上海はすこし大人びた様子になっていた。
行くたびに騒がしくなっていったこのやんちゃな街が、今回は違っていた。
「一回戦が終わったんですよ」
見慣れた上海の景色に微妙な変化を感じ、すこし戸惑う私に向けて、中国在住の日本人の友人からかけられた言葉だ。
空港からの続く道路が、高層ビルが建ち並ぶ浦東へ入ってまもなく、この街が次のフェーズに入っていることを感じることができた。
振り返ってみれば、この街がとんでもない速さで表情を変え始めたのは5年前だった。2001年12月のWTO加盟以来、世界中のお金が流れ込んだ中国。特にこの上海への投資はどの都市よりも大きく、街が休むことなく変化し続けた。行く度に景色が変わる、それは大げさな話でなく本当にそうだった。そのスピードはめまぐるしく、住人ですら何がおこっているのかわからないほどだった。
「今、上海には正しい地図がありません。いつの間にか道路はできる、古い住居街はあっという間に更地になる。地図をつくっても追いつかないです」
親しくしている上海人はそう笑いながら教えてくれたのだった。
それまで経験したことがない好景気に、上海の街はかなり興奮していた。
この街にいち早く投資し、すでに成功を手に入れた人間が乗り回す高級車や高級マンションを横目に見ながら、自分もチャンスをつかむのだという焦りや野心が街中を駆けめぐっていた。何をやれば金儲けができるのか?どんな商売ならまだ間に合うのか?早い者勝ち。昼も夜も街は止まらなかった。それは上海人だけでなく、外国人や地方出身者を巻き込んだ、驚くようなせわしなさだった。
そこまでの野心がない人も好奇心旺盛な消費者として動き続けた。次々と現れる高層ビル内のショッピングモールに人だかりをつくり、買ったばかりの小さな携帯電話をわざと見せるように大声で話す。新参のファーストフードには家族みんなで並ぶ。新しいものに対して素直に反応しどんどん吸収していく。そしてその速さは尋常ではない。だから商品やサービスの寿命は哀れなくらい短かい。これはもう飽きた、もっと新しいものが欲しいんだ。その声が供給者にプレッシャーを与え、変化のスピードを加速させる。一等地の商業施設は高額な家賃にもかかわらず順番待ちだ。上海人を喜ばせるものを出せなくなった時点で即刻退場。この世界一の気まぐれが勝者と敗者をジャッジしていった。この現れては消える新陳代謝の波は上海にヒト・モノ・カネを呼び込み、ますます活気づかせた。
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写真撮影/内田裕子
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