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その国の経済はその国の風景に現れる。
そう聞いてから、私は取材で訪れた場所の風景を緊張感を持って眺めるようにしている。時にはあちこち見すぎて、ぐったりとしてしまうこともある。しかし、街が発するなにげない情報を事前に収集しておくことで、取材した話が腑に落ちてくる事は少なくない。だから私は移動中の「きょろきょろ」を意識的に続けている。
そして今回感じた「一回戦終了」を裏づけたい、そう思って上海での取材に臨んだ。
中国経済は奇跡的なスピードで成長した。しかし、その成長のスピードゆえにさまざまな制度整備が追いつかない。
「黒い猫でも白い猫でもネズミを獲る猫はいい猫だ」といったのは搶ャ平。文化大革命でめちゃくちゃになった中国経済を改革開放へ導いた。そして社会主義市場経済という、でたらめにしか聞こえなかった経済政策を打ち出し、今日の中国の経済成長のベースをつくった立役者でもある。
「先に金持ちになれる人からなっていけばいい」
そういって搶ャ平は毛沢東の「均富論」を全否定し、「先富論」へ180度政策を転換した。「もうイデオロギーを云々している場合ではない」とせっぱつまった中国の混乱の中、極めてわかりやすく国民を導いた。たいした開き直りだ、とも思えるこの言葉だが、共産主義という「夢」から「実事求是」という究極のリアリズムに13億人を引き戻すには、これ以上の言葉はないと思われるほど、中国の目指す方向を端的に言い表したように思える。
その、天才・搶ャ平が生み出したのが「一党独裁社会主義市場経済」。これまでどこにも存在しなかった国家運営にチャレンジしている中国政府に世界は興味津々だが、ここにきてさすがに歪みが見えてきた。本来なら経済成長の過程の中で段階を経て解消していく社会問題をいきなり同時に6つも抱えることになってしまったのだ。
通貨切り上げ、貿易摩擦、生産過剰、不動産バブル、所得格差、不良債権。こっちを立てれば、こっちが立たず。問題解決はナローパスであることは誰が見ても明らかだ。さあ、どうする中国共産党、と、世界中が中国の動向を見つめている。
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写真撮影/内田裕子
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