|
(1/3)
舞台役者で食べていくのは大変なこと。これは今も昔も変わらない。
「お金というのは魂を売った分だけ手に入れることができるんだよ」
そう私に教えてくれた人がいる。好きなことをして、自分も楽しくて、みんなも幸せにして、身も心もキレイなままで大金持ちになる。そんな都合のいいことはめったに起こるものじゃないよ、というわけだ。
なるほど。舞台役者が貧しいのは当然ということね、などとその時は、軽く聞き流したけれど、その言葉はじっとりと私のなかに残っていた。それからというもの、お金持ちを見ると、つい「この人はどれだけ魂を売ったのだろうか」と見てしまう自分がいた。
「うん、確かにこの人、魂売ってるわ」という人もいるし、ごくまれだが「この人は見事な生きざまによって報酬を得ている人だ」と感じる人もいる。だから前者タイプの資産家が人生の終わりが見えてきたところで、多額の寄付をしたりするのを見ると「ああこの人は、売り渡した魂を買い戻しているのだなあ」などとシビアに見てしまったりする。
世の中は甘くはない。
楽しくて、華やかで、かつ、魂も売らずに多額の報酬を得られる職業などあるはずがない。
そんな奇跡を引き起こす職業があるとすれば、それは芸術とスポーツだ。
「神に選ばれた人」
芸術の世界でもスポーツの世界でも、そうとしか言いようがない、輝くような才能に恵まれた人がいる。この世界で評価されるのはそのようなごくわずかな天才だけ。彼らは凡人たちを非日常の世界に導き、喜びや希望を与えてくれる。そしてその対価として多額の報酬を受け取っている。その陰には考えられないほどの努力や、天才ゆえの孤独など、試練があってのことだが、そういったことも無意識に日常の中にさらりと昇華しながら、平然と生きているのもまた、天才の特徴のひとつともいえる。
←前のページへ/次のページへ→
写真撮影/内田裕子
|