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●『資産形成』と『資産活用』はまったく違う
そのように十把一絡げに扱われたくなければ、私たち自身がしっかりとした金融商品の知識を身につけてなければならない。そこで岡本氏に、どのような意識を持っていれば、自分に適した金融商品を選んでいくことができるようになるのか尋ねてみた。
「個人投資家の資産運用には大きく二つ、『資産形成』と『資産活用』に区分できます」と岡本氏。
若い人は、給料の一部を金融商品に投資してコツコツと資産を増やしていく「資産形成」を行うべきです。一方、リタイアした人は、今ある資産を上手に運用しながら使って、滞空飛行時間をできるだけ延ばす「資産活用」をすべきだ、という。
「資産形成」はお金を入れていく。
「資産活用」はお金を出していく。
「これらは全然違うんです。例えば三十代のための「資産形成」に適した金融商品と、六十代以上のための「資産活用」に適した金融商品は、違うべきだし、違わなきゃいけないはずです。でも、多くの金融機関はここを無視して、だれにでもなんでも『これ上がりますよ』と勧誘をしている。これには大きな危機感を覚えますね」と岡本氏は憤る。
年齢によって、持っている資金も時間も違う。とれるリスクもしかり。資産の中身が違ってあたりまえだ。
では、まず、若いうちの「資産形成」はどういった心構えで望めばいいのかを聞いた。
「若いうちは高いリスクをとってもそれほど問題はない。ハイリスクをとってもハイリターンを狙っていけるでしょう」という。
金額は少なくても毎月収入があり人生の残り時間がたっぷりある若い人は、万が一、損失を被ってもリカバーできるから、ある程度リスクをとってもいい、ということだ。
でもね、と付け加える。
「若いうちはね、株の銘柄選択などに一生懸命になっているべきじゃないと思う」と、厳しい表情で語る。
「運用する商品はETFとか、インデックス投信で充分。個別銘柄の選択に血道をあげる時間があるのだったら、自分の仕事に関係した勉強をやって、その道のプロフェッショナルになった方がリターンは遥かに高い。資格をとるとか、英会話を習うとか、自己啓発投資はもちろん良いが、それよりも今の仕事を一生懸命にやる。それが一番効率のいい投資だと思う」
自分への投資が一番のリターンを生む。言われてみると確かにそうだ。
投資で1千万円儲けることを考える暇があれば、年収1千万円もらえる人間になるために努力したほうが確実だし、リターンに継続性がある。何よりもそのほうがはるかにすばらしい人生を送ることができる。
次は、六十歳以上の場合どうか。氏はこうアドバイスする。
「難しい点は、資産を崩していかなきゃいけないこと。いかに利益を出しながら、必要なものだけを引き出していくか。そこが大きなテーマになっていくと思います。」
そうなると、高齢者は元本保証の安全安心な金融商品だけで運用すればいい、と単純に思いたくなるし、雑誌などに載っている家計相談コーナーには、たいていが保守的なことばかり書いてある。しかし、岡本氏の答えはそれらとは少し異なっている。
「保有している資産額にもよりますが、そのくらいの年齢の方は人生経験があるので、少しアクティブな要素を入れてもいいと思います。コア・サテライトの説明は先ほどしましたが、コアの部分は堅実に、サテライト部分はアクティブな個別銘柄の株を選んでもいいのではないでしょうか。大切なことは二つのお財布を分けること。決めた枠内でやればリスクも限定されます。株式投資は社会とのつながりも持てるし、楽しみとしてやってもいいのではないかと考えます。」
岡本氏の話はとても丁寧だ。聞いていると、世間一般で言われている投資の話が、いかに前提を無視した、雑な話ばかりであるかが分かってくる。これは、マーケットの酸いも甘いも知り尽くした、深い経験があり、尚且つ、現在は何の影響も受けない中立な立場を保っている岡本氏だからこそ言える、本音のアドバイスなのだ。
若いうちは社会の中で自分という人間の価値を高めていくことが、なによりも一番の投資である。それ以外の投資はなるべく時間をかけず、安定的なものを選べば十分。一方、資金も時間もある程度余裕がある高齢者は、コア部分の運用をしっかりやっていれば、リスクをとりにいって、投資を楽しむこともよい。
こうして丁寧に説明されると、同じ運用でも三十代に意識すること、六十代でやるべきことは、まったく違うということがわかってきた。
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