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しかし、キャッシュをたくさん持ったまま、積極投資をしないというのも、株主からみると問題だと思えるが、そこはどう考えたらいいのだろうか。
「稼いだお金をずっとキャッシュで持たれても株主は困ります。1年間普通預金に置きっぱなしですと利回り1%にもなりません。それならば自社株買いをやってもらったほうがいいのです。株式価値も上がります。同じ株主還元でも配当ですと、投資家にとっては税金の負担は高まります。自社株買いのほうが、結果的には株主価値向上のためにもなるのです」
企業は無借金経営のほうが気が楽だ。いざという時には銀行はあてにならないことは、過去の経験で分かっているから、なにかの時に備えて潤沢に現金を持っていたい。経営者ならだれもがそう思うはずだ。トヨタ自動車のあの余裕に満ちた経営は、莫大なキャッシュがあるからといっても過言ではない。苦労して働いたお金を、株主還元に吸い取られることに抵抗感がある経営者の気持も分からなくはない。しかし、株主はリスクをとって企業に投資をしているのだから、株主資本を有効に活用してもらうことで、株主還元を期待するのは当然だ。
資本主義の歴史は、経営者と株主による利益の奪い合いの歴史だ。しかし、これまでの日本企業は大株主が身内か仲良し同士であったから、幸か不幸かそのような面倒なことを避けて経営をやってこられた。しかし、これからはそうもいかない、と菱川氏は言う。
「これからは難しくなるでしょう。今回の株主総会で株主の提案が却下されたとします。けれども、1年経っても株価は全く上がらない、キャッシュがあっても増配しない。株主に還元するより、社内で前向きに投資をすると公言しても、1年経っても、キャッシュのまま。もしそんなことをしたら、来年の株主総会で、なにも決めたことを実行していないじゃないですかと、言われ、経営者の責任になってくるわけです」
どちらにしても、経営者のプレッシャーはますます強くなってくる。そうすると経営者の意識も変わってくる。
「僕は長い間日本株を見てきましたが、今、株式市場を襲っている変化は明治維新に匹敵すると思います。日本の経営者には相当なゆさぶりをかけられていますね」
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