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講師紹介 |
 川田茂雄
(かわだ・しげお)
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| 1945年、東京都生まれ。都立高校卒業後、某カメラメーカーに入社。製造部門、消費者相談室、各サービスセンター所長を務め、多くのクレームを解決する中で消費者問題の大家とも対決、以後、友好関係を築く。2002年、退社。現在「クレーム処理研究会」を主宰、各企業へのCS指導、講演活動を行なっている。
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第12回 |
クレームの形態分類 「リタイヤマン型」 |
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■1200ミリ超望遠レンズは欠陥品だ!
消費者相談室にいた時の話ですが、ある日社長親展・速達・書留の手紙が本社に舞い込みました。内容は、「1200ミリ超望遠レンズを買ったがどうにもファインダー像が揺れてシャッターが押せない、これは欠陥品ではないか」というものでした。
手紙に社長の個人名が書かれていれば社長が見ますが、単に「社長」宛てであれば、秘書室は内容を確認した上で、該当職場に手紙を回送してきます。たまたま、順番でこの手紙を引きうけた私は、直ぐにお客様に電話をしました。
社長宛てにお手紙を頂いたお礼と、社長からよくお話を伺って善処するよう指示されている事、そして1度お伺いして現品を確認させていただきたい旨を伝え、訪問日時の約束を取りました。
数日後、町田市郊外にある大きな団地を訪問しました。東京会館のガトーを手土産にマンションを訪ねると、60歳くらいのお客様が1人で留守番をしておりました。
お話を伺うと、今年の春まで大手家電メーカーで品質部長をされていたが、退職金でコンピュータ一式と当社の最高級一眼レフと1200ミリのレンズを購入してカワセミの写
真を撮ろうと思っているが、なかなかうまく撮れないとのお話でした。
奥様は役所の管理職で毎日夜遅くまで仕事、一人娘のお嬢さんも、昨年嫁いで、家には自分ひとりしかいないのだと言います。本人自らコーヒーを入れてくれて、私が持参したお菓子を開けて食べながら話を続けますが、どこか寂しさを漂わせています。
どんな写真を撮っているのかを尋ねると、近所の公園でカワセミを狙っているとのことでしたが、1200ミリのレンズをつけると、ファインダーがフラフラ揺れてどうにも怖くてシャッターが切れないとの事でした。
そこで三脚にカメラ・レンズをセットしていただくと、どうにも三脚が細すぎます。もっと大型三脚を使わなければ不安定です。そして、レンズにつけるメインの三脚とは別にカメラの方にも一脚をつけて、支えることをお薦めしました。
更に、三脚に砂袋をぶら下げれば、きっと安定してブレは心配なくなりますとアドバイスしました。また、一気に1200ミリで撮影するのではなくて、出来たら、50ミリ〜300ミリのズームレンズを一本購入して、下撮りをすることをお薦めしました。
カワセミがどんな動きをするのかを充分に見極め、中距離用のズームレンスで下撮りをして、それから本番の1200ミリで撮影するという手順も提案しました。
■顧客の買い物につきあう
翌日、新宿のカメラ量販店で待ち合わせをして、三脚、一脚、それに中距離用のズームレンズを購入しました。如何に相談室とはいえ、1人のお客様の買い物にまで付き合う事はないのですが、この際、徹底的に付き合って問題を一挙に解決しようとの試みでした。
奥様の稼ぎが良いので、ご自分の退職金は使い放題らしく、高価な機材を買っては頂きましたが、「自分が思っていたレンズ品質とメーカーの打ち出している品質に差異があるから返品したい」などと言い出されるとややこしいので、「こうすれば良い写真が撮れるんですよ」と教えてあげなければいけません。
■撮影現場にもつき合う
翌日は、朝、一番に起きて町田市郊外の大きな池まで出掛けました。すでに何人かのアマチュアカメラマンがカワセミを狙っていましたが、池の中に出ている1本の枯れ枝にカワセミが来るというのです。
池の中の枯れ枝までなら300ミリレンズでも充分撮れる距離です。暫く待っていると、キンクロハジロがやって来たり、公園に放されているチャボが寄って来たりして退屈しません。しかし、その日は何故か一度もカワセミは姿を見せず、肩透かしを食ってしまいました。
しかし、カメラに一脚をつけたり、三脚に砂袋を下げたり、と1200ミリレンズをつけての撮影要領を伝授して、狙い場所も決めました。
他のカメラマンより遥か離れた位置から、カワセミだけをワンポイントで狙いますから、カワセミがやってくればきっとごきげんな写真が撮れるはずです。
そんなことを説明して、この日は引き上げましたが、お客さまは翌日から毎朝、暗いうちから起きてその池に通い出したようです。
1ヶ月が過ぎた頃、半切サイズに引き伸ばした写真を何枚も抱えてそのお客様が消費者相談室にやってきました。拝見すると、どれも見事な出来映えです。
「うわー、ごきげんですね。すごい!すごい!」 と誉めますと、ご本人もまんざらでもなくとても喜んでくれました。
お茶を飲みながらお話を伺ったところによると、定年になって、もう絶対に仕事はしないと心に決め、カメラとコンピュータを買ったのだが、コンピュータはなかなか難しくてうまく使えない。
カメラの方は、狙う鳥は直ぐに逃げて行ってしまうし、うまく撮れない。誰も相手にしてくれないし、公園で寄ってくるのは、同じリタイヤ組みの年寄りばかりで気が滅入ってしまう。
そんな時に、あなたがやってきて、色々面倒を見てくれた。機材購入にも立ち会ってくれたし、現場にも行って一緒に撮影を手伝ってくれた。色々アドバイスをくれて、毎日のように電話をくれた。あれ以後人生が変りましたよと。しみじみと語っておりました。
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