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講師紹介


川田茂雄
(かわだ・しげお)

1945年、東京都生まれ。都立高校卒業後、某カメラメーカーに入社。製造部門、消費者相談室、各サービスセンター所長を務め、多くのクレームを解決する中で消費者問題の大家とも対決、以後、友好関係を築く。2002年、退社。現在「クレーム処理研究会」を主宰、各企業へのCS指導、講演活動を行なっている。


   第27回  百戦百勝のクレーム対策  
 

 「百戦百勝のクレーム対策」と題して26回にわたってお話してきましたが、この間、全国からお誘いがあり講演活動を進めております。そこで時々こんな質問をされます。「川田さんは成功談ばかりですけど失敗談はないのですか?」と。そうです、私はこのクレーム処理に関しては自慢話ばかりで失敗談がありません。本当は反省が無いのかもしれませんね。

 しかし、クレーム処理を担当されている多くの方が失敗談は無いのではないかと思います。クレーム処理での失敗はどういうことになるかと言いますと、多くの場合、そのポストなり職場なりを追われてしまうのです。ですから、それ以後も継続的にクレーム処理を続けることは難しいということです。


■「武闘派」とよばれた相談室長

 以前、消費者問題関係者から「武闘派」と呼ばれた有名な消費者相談室長がおり、消費者関連団体や各企業を回ってクレーム処理の講演をしておりました。私も、大阪にいた当時、その方の講演を聞いたことがありましたが「武闘派」と呼ばれるだけあって、そのクレーム対応はマニュアル通りのガチガチの解決方法でした。

 ごね得は一切認めない。うるさい事をいうなら直ぐに警察を入れてこちらから脅してしまうよな、元気な方でしたが、その話を聞いて私は“それで問題が解決できれば苦労はしない、あぶないぞ”と思ったものでした。


■交渉中に役員に電話。途端にクビ

 それから、しばらくして、その相談室長は定年を待たずして室長をクビになったという話を聞きました。どういうことかというと、自分ではその問題をうまく解決出来ると思って粘り強く交渉していたらしいのですが、相手のお客様が、「この相談室長では話にならん」と、会社役員に直接電話を入れたらしいのです。

 大きな企業ですから普通でしたら、直ぐに役員が出てくる事も無いのでしょうが、その時に限って役員が電話に出てしまい、お客様から直接文句を言われたのです。役員はクレーム処理に慣れていませんからきっと驚いたと思います。しかし、お客様の話を聞く限りでは、悪いのは当社です。そこで相談室長は一体何をやっているのだということになり、役員は完全にお客様の味方になってしまったのです。

 これで一巻の終わりです。フットワークの良い企業でしたから何でも早く、相談室長は直ぐに役職を外され、商品倉庫番に飛ばされてしまったのです。定年まで勤めあげられず相談室長をクビになってしまったのです。

■失敗の原因を探る

 これが、企業のクレーム処理の現実です。失敗は決して許されません。一流企業でこれに似た例を何件か見ています。しかし、ここでの問題は何であったのかを考えてみますと、それは、

  1. 何でも自分の思うように解決できると考えた相談室長の思い上がり
  2. マニュアルに頼りすぎた。マニュアルの弊害
  3. 千差万別のお客様に対して「武闘派」という一本調子で対応した事
  4. クレームは例え自分で解決できると思っても、早め早めに上司に報告しておく事が何よりも大切なのにそれを怠った

ためです。

 特に最近は企業合併などがあり、クレーム担当の人も動きます。以前の会社でやっていたクレーム処理方法が新しい会社でも通用するとは限りません。商品も異なれば、客層も異なるのですから、そこに合わせた新たな対応を考えていかなければ、百戦百勝はありません。この相談室長も実は企業合併で上位企業に移ったのに、以前の会社のお客様を相手にするのと同じ積もりでやったが為の失敗と私は考えます。

■お客様が必ず評価してくれる

 クレーム処理というのは、企業の中ではまだまだ疎外された職種です。お客様には罵詈雑言で怒鳴られるなど決して恵まれてはいませんが、常に会社を代表してお客様と接するのですから企業を代表する高邁な精神のもと十分に勉強をして対応して行かなければなりません。会社から評価される事は少ない仕事です。けれど、その対応に真実があるならば、お客様は必ずや評価してくれます。「失敗した」、「負けた」とその時は思っても、あなたの対応に真実があるならば、いつの日にか「ああ、勝った!」と思える日が必ず来ますので、大きな希望をもって、長い目で物事を見て、仕事に取り組んでいただきたいと思います。

 「百戦百勝のクレーム対策」長い間お付き合い戴きありがとうございました。では、いつの日かどこかで、素敵な皆様にお会いできる日を楽しみにしております。

 

 



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