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講師紹介


川田茂雄
(かわだ・しげお)

1945年、東京都生まれ。都立高校卒業後、某カメラメーカーに入社。製造部門、消費者相談室、各サービスセンター所長を務め、多くのクレームを解決する中で消費者問題の大家とも対決、以後、友好関係を築く。2002年、退社。現在「クレーム処理研究会」を主宰、各企業へのCS指導、講演活動を行なっている。


   第2回  オリンピックの写真を失敗した常務が損害賠償を要求  
 

■フィルムがほとんど2重写しになっていた

 一部上場企業の常務がオリンピック招待ツアーの写真を失敗、参加者に渡す写真が無いと300万円の損害賠償をサービスセンターに要求してきました。
 サービスセンターで事故カメラを調べたが全く異常なし。しかし、常務が持ってきた 20本のフィルムのほとんどのコマが二重写しになっていました。
 このカメラは撮影モードに「多重撮影」があるので、このボタンをセットしてしまうと、事故フィルムのような2重写しの写真が出来てしまうのですが、常務は、一切そんなボタンは触っていないし、他人にカメラを触らせたこともない、カメラの欠陥だと主張しています。
 事故カメラを技術に送って徹底事故検証に入ったがカメラにおかしな所はありません。こうなると「多重撮影モード」に設定されていた事以外考えにくいのですが、フィルムの所々に正常なコマがあり、これが何故なのかが容易に解明出来ませんでした。

■弁護士が介入

 検証に時間がかかっていたら、常務はなんと自分の旧友の弁護士に相談したらしく、ある日突然、地方の弁護士から「通告書」が本社に届きました。「オリンピックの貴重な映像が撮れなかったのは、カメラの欠陥と思料される。物心両面に亘る損害について貴社には製造物責がある」というものでした。
 相手が弁護士を入れるならこちらも弁護士と、顧問弁護士に相談して、回答書を作り、「カメラは悪くない」と反論することにしたのだが、誰の名前で回答書を出すかという段になると、みな尻込みしてもめている。関係部門はみな逃げ腰なのです。

■逃げ回るカストマ部長

 仕方なくカストマ部長名で回答書を発信したのですが、すぐに弁護士からカストマ部長に電話がかかってきました。するとこの部長、目をパチパチさせてチック状態に陥り、居留守を使って電話に出ないのだという。
 そして2度目に電話が来た時には、事務の女性に「SCの川田君に、弁護士に連絡するように言っといて」と言って自分は外出しちゃったというから重症です。
 私はここではじめて本件に関わる事になったのですが、直ぐに弁護士に電話をしました。
 すると、弁護士は「回答書でカメラは悪くないと言っているが、肝心の”正常に写っているコマ”についての解析がなされていない。どうなっているんだ」と言う。
 すぐに私は、フィルム20本全部をキャビネ大にプリントし、会議室一杯に時系列的に並べ、事故検証をした技術者ではなく、製造現場や設計にいて、写真に詳しい昔からの仲間を集めてプリントを見てもらいました。

■実力ある仲間の応援を得る

 すると、どれもが完全な2重写しになっているのですが、所々に正常に撮影されたように思えるプリントがある。これをみんなでルーペを使って念入りに見ていくと、1人が、遂に正常なコマの後方に写っている車のテールランプが僅かに流れているのを発見しました。
 正常に撮れていると思われるコマも実は、2重写しになっていたのです。ただ、メインの被写体が全く動かない間にシャッターを2回切ったから写真はあたかも正常に見えているに過ぎないのです。
 技術部門が1ケ月近くかかっても解明できなかった問題を、私の仲間たちは僅か数分で解決してくれました。持つべきは、実力のある仲間なのです。
 プリントを良く見ていくと、「他人にカメラを触らせたことなど絶対にない!」と言いきっていた常務が写っているカットが見つかりました。これは常務が他の人にカメラを触らせている証拠だ。自分はボタンに触ったことがないと頑張っても、他の人がボタンにさわったかも知れず、常務の発言は信用できないものとなりました。
 この証拠を持って再度弁護士に連絡、説明すると一応了解。次は常務本人への説明があるので会社を訪ね、プリント700枚を見せながら検証経過を詳しく説明しました。
 しかし、この常務実に腹黒い。自分の否は明らかなのにそれを認めようとしないのです。
「あ、そう」などとトボケている。そしてあわよくば300万円を支払わせようとしていたのです。
 会社には顧問弁護士が沢山いるだろうに、何故、遠い田舎の弁護士を引っ張り出したのか?
 きっと田舎に帰った時にでも、「うまく行ったら2人で一杯やろうや」などとよからぬ 考えを起こしたクレーム騒ぎだったのではないでしょうか。

■クレームは逃げずに正面から対応


 人は追い詰められると責任逃れしたくなります。確かに逃げたくなるほど大変なことはよく解かるのですが、それが自分の仕事ならば、クレームからは決して逃げずにきちっと対応して行かなければなりません。必ずや道は開けてくるものです。

 



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