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講師紹介


川田茂雄
(かわだ・しげお)

1945年、東京都生まれ。都立高校卒業後、某カメラメーカーに入社。製造部門、消費者相談室、各サービスセンター所長を務め、多くのクレームを解決する中で消費者問題の大家とも対決、以後、友好関係を築く。2002年、退社。現在「クレーム処理研究会」を主宰、各企業へのCS指導、講演活動を行なっている。


   第6回  クレームの形態区分 「神経質型」  
 

 神経質型のクレームを演じるお客様は、根っからの神経質タイプと後天的に神経質を演じているタイプと大きく2通り有るように思います。前者は、病的なまでにうるさい人がいますが、これはもう、ある程度仕方がないこととして、今回は後天的に神経質を演じてくれる神経質型のタイプを紹介しましょう。


■レンズにゴミがある


 大阪梅田のサービスセンターに、「レンズにゴミがあるから見て欲しい」と言って来た年輩のお客様おりました。

 スタッフがレンズを拝見しますと、確かに、小さなゴミですが、レンズの奥の方に気にすれば気になる程度のごみがあります。品質基準には充分に入っている程度のものですので、この場合、何とお答えするかが受付スタッフの腕の見せ所でもあるのですが、「確かにごみはございますが、この程度のごみですと、性能には全く影響しませんので安心してお使いください」 と申し上げました。

 すると、お客様は「解かりました。確認していただければそれで結構です」と言って、特に怒るでもなく帰って行かれましたが、これが1番危ないタイプです。次にどんな行動に出てくるのかが危ぶまれるところなのです。それから暫くして社長宛てにレンズと1通の手紙が届きました。「買ったばかりのレンズにゴミがある。昔のレンズはこんな事はなかった。貴社は最近考え方が変ったのか? 少し思いあがっているのではないか。いかに品質基準内だといっても、甘えてはいけない。ユーザーの声に耳を傾けて品質の向上をはかるべきである云々」

 手紙はこのようにあっさりと書かれており、「だからどうしろ」とは何も書いてありません。社長宛てに来た手紙は社長が目を通しますが、直ぐにお客様相談室に回されました。


■相談室の対応

 地方のお客様を相手に東京の相談室が直接クレーム対応するというのは、距離が離れているだけに意外とややこしいものです。しかし、社長宛てに戴いた手紙ですから、まずは相談室が担当しなければいけません。

 早速お客様に電話を入れ、この程度のゴミは、性能上は全く問題ない事を説明させていただき、今回は綺麗に清掃してお返しする事を約束しました。そして修理で念入りに清掃した上で宅配便でお返ししました。

 しかし、直ぐに電話で、「以前よりも余計にごみが増えている、一体何処を清掃したのか?」と怒り出しました。
 相談室の担当者は、あわてて、「それは申し訳ありません、現品をもう1度清掃させていただけませんでしょうか?送り返して戴けませんでしょうか?もちろん、着払いで結構です」と答えて、現品を送り返してもらいました。

 送り返されたレンズは、確かにゴミが増えているようにも思えます。輸送途中の振動などで隠れていたゴミが出て来たことも考えられます。しかしそれ以上に、ゴミというのは、気にすれば気にするほどよく見え出してくるのです。いままで気がつかなかった部分のごみまでが、うっとうしく見え出すのです。再度念入りに清掃してお返ししたのですが、返せば直ぐに、今度は、今までなかったケバがある。レンズに泡がある。レンズの絞り羽根の色が1枚だけおかしくなった。絞り形状がおかしい。などと次々とクレームになってしまいました。


■クレームをたらい回しする相談室

 クレーム処理の専門家がクレームが解決出来ないとなるとどうするかというと、なんと、相談室長は、「これは品質の問題なんだから品質部長が回答すべきだ」と問題の解決を品質部長に押し付けたのです。

 クレームを押しつけられた品質部長だって、それは大弱りです。なぜなら、今までそういうややこしいお客さんとやりあったことなど一度もないのですから。簡単な問題ではあるのですが、それだからといって部長が出て行っても解決出来る見込みなど全く立たないのです。

 そこで、連中が考えるのは毎度のとおり、「川田さん、レンズのゴミでつかまっちゃってるんですけど、ちょっとアドバイスをお願いできませんか」などと人を会議に引っ張り出して問題を押しつけることなのです。どうやってこの問題を解決したらよいかと小田原評定が始まりましたが、出席メンバーのほとんどがクレーム処理の経験がない。担当課長は、部長の手前自分が進んで出て行って問題解決しなければと考えはするのですが、やったことが無いものは怖くて出来ない。ましてやお客様相談室が音をあげたクレームですから、危険が多すぎる。ということで結局どうなったかといえば…。次回をお楽しみに。

 



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