1.地上波デジタル放送とは
地上波デジタル放送とは、2003(平成15)年12月1日から始まるデジタル方式の地上波による放送です。サイマル放送(*解説参照)で3大都市圏から始めて順次全国に拡大し、2011(平成23)年7月24日にはアナログ放送を全廃する計画となっています。
地上放送のデジタル化は、政府が掲げたIT戦略の中で重要な柱として位
置付けられています。テレビという全国ほとんどの家庭に普及したテレビを、誰でも使える身近な情報端末とすることで、情報格差(デジタル・デバイド)を解消するとともに、放送分野、家電産業や通
信分野などへの経済効果や、新たな産業や文化を生み出すことが期待されています。経済波及効果
としては、10年間で総額212兆円、約711万人の雇用創出が推計されています。
また、携帯電話など様々な情報端末の爆発的な普及により、日本の電波は新たな需要に追いつかない状態となっています。地上放送のデジタル化により、これまでの電波を圧縮し需要に対応することも可能となります。
2.地上波デジタル放送のメリットと問題
テレビをデジタル化するメリットとしては、次のようなものが挙げられています。
■視聴者にとってのメリット
(1)高画質・高音質な番組を楽しむことができる。
(2)チャンネルが多様化し、選択の範囲が広がる。
(3) データの蓄積や双方向機能などにより、活用法が広がる。
(4) 高齢者や障害者にやさしいサービスが可能となる。
(5) 携帯電話や携帯端末などの移動体でも安定した受信が可能になる。
■放送事業者にとってのメリット
(1) 多彩な放送サービスが可能となり、ビジネスチャンスが拡大する。
(2) 多彩な番組制作、編集等の効率化を実現できる。
(3) 送信電力が少なくてすみ、省エネにつながる。
(4) ソフトの長期保存や圧縮保存、再利用やマルチユース化に寄与する。
(5) 双方向性を活用すること等により、ニーズへの一層の対応が可能となる。
■機器製造業者・番組ソフト制作業者にとってのメリット
(1) デジタル受信機市場が拡大する。
(2) 新デバイス(装置)の需要が拡大する。
(3) 放送番組需要が増大する。
(4) 放送番組の国際市場への進出機会が拡大する。
一方、こうした事業に国費を投入することについて次のような批判もあります。
■こうしたメリットの享受は、地上波デジタル放送でなくとも可能である。
■ 必ずしも必要ではないにも関わらず、数兆円規模の税金の投入と視聴者の多額の出費を
前提に進めるのは問題である。
■ 年金で生活する高齢者や低所得者などに過度な負担を与えることになる。
■アナアナ変換(*解説参照)は無料(税金)とはいえ、事業所等はその対象からはずされる上、
個人についても個々に申請が必要となる。さらにマンション等では大規模改修が必要となる場合も多いが、
これらは全て重い自己負担となってしまう。
【補足:関連用語の解説】
地上波デジタル放送について知ろうとすると、いくつかわかりにくい言葉にぶつかります。ここでは補足としてこれらをかんたんに説明します。
●アナアナ変換
アナログ周波数変更対策の略語で、地上波デジタル放送の事前準備として必要な対策です。電波の混み合う日本では、地上波デジタル放送を始める際に現在アナログ放送を流している周波数の一部を使う必要がありますが、そのままだと混信が発生してしまいます。これを避けるために、一部のアナログ放送をアナログのまま別
の周波数に移動・変更する必要があります。これを「アナ(→)アナ変換」と呼んでいます。
これらの費用は国が負担することになっています(事業所以外)が、当初予算700億に対し、実際には1800億円に膨らんでいます(財源は携帯電話の使用料です)。
●サイマル放送
「サイマル(Simultaneous)放送」とは、同じ番組を複数のチャンネルやメディアが放送することです。アナログからデジタルへの移行過程で、サイマル放送を実施することになります。
●BS放送、BSデジタル放送
BS放送とは、1989年に本放送が始められた放送衛星を利用した放送です。BSデジタル放送は、2000年から本放送が開始され、デジタルハイビジョン放送、標準テレビ放送、音声放送、データ放送が行われています。
鳴り物入りで始まったものの動きは鈍く、「1000日で1000万世帯」の目標に対して現在300万弱といった状態で、地上波デジタルテレビに対する家電業界の反応にも影響を与えています。
●CS放送、CSデジタル放送、110度CS放送
CS放送とは、通信衛星を使った放送です。CSデジタル放送は、放送デジタル化の先駆けとして1997年から本放送を開始しましたが、期待とは裏腹に不振が続いています。110度CS放送は、同じチューナーとアンテナでBSデジタル放送も視聴可能なこともあり、大きな期待がかけられましたが、放送開始から1年たった現在でも加入者は10万件に達していません。
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