1.職務給とは
「職務給」とは、社員が従事する職務(ポスト)により賃金(給与)を決定する方法で、米国で普及した考え方です。
職務給は、社内の全ての職務について、その価値や難易度、就労条件などを測定し(「職務分析」といいます)、その結果
に基づいて、定められた職務の序列(「職務評価」といいます)を反映して決定されます。つまり、職務ごとに賃金があらかじめ決められ、そこに社員が投入されることになります。したがって基本的には、同じ仕事は誰がやっても同じ賃金となります。また同じ仕事をしている間は賃金の上昇はなく、定期昇給といった概念はありません。
但し現在では、業務が複雑化、高度化していることから、多くの場合1つの職務内に賃金範囲を設定する「範囲職務給(レンジレート)」が採用されています。これは「職務能力給」とも呼ばれています。
職務給には、人件費の急騰の回避以外に、客観的に賃金が決まり流動的な労働市場に適している、従業員の職務志向を強めプロ意識を引き出す、といった長所があります。一方で、配置転換のたびに賃金を見直すことが必要となり労働者の安心感が低下する、環境が大きく変化する中で職務内容の変化も十分にありえることから職務等級制度のメンテナンスが煩雑となりやすい、といった短所があります。
2.職務給の設計
職務給は、概ね以下の流れで設計され導入されます。
(1)職務分析と職務記述書の作成
社内にある職務に関する情報を収集し、職務の内容(業務の種類や手順など)と、職務の遂行に必要な要件(知識、スキル、能力、特性など)を特定し、これを統合的に記述します。職務記述書は、一定のフォーマットに従い、もれなく簡潔に表現します。
(2)報酬要素の決定とウェイト付け
必要なスキル、必要な努力、責任範囲、安全性など、職務に含まれているどんな要素に対して賃金を支払うのかを決定するとともに、職務の自由度や財務へのインパクト、ノウハウや問題解決などを勘案し、相対的に重要度を決定します。
(3)職務評価
職務記述書の情報から報酬要素を抽出し、その度合いを判断します。
(4)賃金サーベイと市場レートの把握
企業内外の賃金と職務の関係についての情報収集を行い、同一職務同一賃金に基づく市場レートを把握します。
(5)職務の階層化と職務給の決定
職務評価に基づき、相対的な職務階層を決定し、職務階層と市場レートから、当社の職務給レートを決定します。
3.職能給との違い
一般に、年齢によって決められる「年齢給」、勤続年数を基準に決められる「勤続給」を合わせて「属人給」といい、職務の遂行能力に応じて決められる「職能給」、職務の価値や重要度に応じて決められる「職務給」といった仕事を基準とした基本給を「仕事給」といいます。
「職能給」は、企業が労働者を雇うのはその人の持っている能力を活用したいからだとの考え方に基づき、その能力に見合った賃金を支払おうとするものです。職能給は、能力を評価し格付けする仕組み(職能資格制度)を整え、能力の格付け(職能資格等級)を基準にして賃金を決める制度です。
一方「職務給」は、企業が労働者を雇うのは労働力を必要とする仕事(職務)がそこにあるからだとの考え方に基づき、その職務に見合った賃金を支払おうとするものです。職務給では、それぞれの職務がどのような能力を必要としているかという観点から職務を分析・評価し、職務の格付け(職務等級)に基づいて賃金を決定します。
つまり、例えば、同等の能力を持つ者が異なるポストに配置された場合、職能給の場合は同等の賃金が支払われることになりますが、職務給ではその職務の格付けによって賃金は異なることになります。
4.近年の動向
これまで多くの企業で取り入れられてきた職能給は、学歴や年齢、経験、勤続年数で能力を測るという運用が行われがちでした。これは、企業が右肩上がりの成長軌道にある場合にはうまく機能するシステムでした。しかし低成長期に入り、こうしたシステムはポスト不足や社員の高齢化による人件費の高騰という事態を招くようになりました。また日本企業の高い賃金水準と労働分配率は、経済社会の国際化が進む中で、企業の競争力にも影響を及ぼしています。
このような状況にあって、最近では、職能給でも職務に着目した設計・運用が重視されつつあります。また日本的経営には馴染みにくいと言われこれまで導入が少なかった職務給でも、能力評価を積極的に取り入れたかたちでの導入が増加しています。
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