1.クローンとは
「クローン(Clone)」という言葉の語源は、ギリシャ語の「Klon(小枝)」ですが、現在では「同一の遺伝情報を持つ生物や細胞」を指す生物学用語として使われています。1903年にH.ウェッバーが名付け、分枝系とも訳されます。
個体の場合、親と全く同じ遺伝情報を持つ生物個体を指し、細胞の場合は、1個の細胞が分裂してできた子孫の細胞集団を指します。特定の遺伝子だけを増殖させることを、特に「クローニング(Cloning)」と呼びます。
2.クローン技術とは
クローン技術は、遺伝子組換え技術と並ぶバイオテクノロジーの先端技術のひとつです。身近なクローン技術として、これまで植物に多く用いられてきた挿し木や差し葉などのようなものがあります。しかし近年一般にクローン技術という場合には、動物の場合に用いられる次の2種類の技術を指すことが多くなっています。
(1)受精卵(胚細胞)クローン技術
受精後発生初期(受精後細胞分裂を続けていく初期の段階)の胚の細胞を用いる方法です。受精後、細胞分裂した細胞を分離し、その細胞と核を除去した未受精卵とを電気刺激を与えて細胞融合させ(核移植)、培養により細胞分裂を誘発させた後、子宮に戻します。
この場合、誕生した子同士は元の受精卵に由来する同じ遺伝子を持ったクローンですが、受精卵を使用するため受精の過程が必要となり、その個体の遺伝子の組み合わせを事前に知ることはできません。また産生できるクローン数には制限があります。
1986(昭和61)年にこの技術によるクローン羊が初めて英国で報告され、その後1987年にクローン牛が米国で報告されました。1996年には、霊長類で初めてのクローン猿が米国で報告され、世界的な注目を集めました。
(2)体細胞クローン技術
皮膚や筋肉など、成体の体細胞を用いる方法です。細胞核を取り除いた未受精卵と成体の細胞を融合させる、あるいは細胞核を取り除いた未受精卵に成体細胞の核を注入して、子宮に移します。
この場合、誕生した子は元の成体と同じ遺伝子を持ったクローンとなります。使用できる体細胞の数には限りがないため、理論上ではクローンを無限に産生することが可能になります。また成体細胞が雌から提供された場合には、雄が関与することなくクローンをつくることができることになります。
1996年に英国のロスリン研究所で、雌羊の体細胞を使ったクローン羊「ドリー」が誕生しました。「ドリー」は成体の体細胞を用いて生まれた哺乳類で初めてのクローンとして、世界中の注目を集めました。通常より短命であったものの(一般的な寿命は11〜12歳であるところ、6歳半でウイルスが原因の肺がんで死亡)、妊娠、出産し、クローン羊の生殖能力も証明しました。
1998年には日本で成体の体細胞を用いたクローン牛「のと」と「かが」が誕生、1997年には米国でクローンマウスが誕生しています。
また1997年には、クローン技術と遺伝子組換え技術を使ったクローン羊「ポリー」がロスリン研究所で誕生しました。使用した細胞には、血友病の治療に必要なたんぱく質を合成する人の遺伝子が組み込まれています。
3.クローン技術の応用と問題点
クローン技術は、人為的に選んだ遺伝的特徴を持つ動物の大量生産などが可能になることから、様々な分野への応用が期待されています。同時にそれに伴う危険性の指摘も多くあります。
●食料分野
食料として優良な動物の大量生産等が期待されています。日本でもクローン牛の研究が進められ、1993(平成5)年からは食肉として、1996年からはクローン牛の牛乳も出荷されています。但し、クローンであることの影響について不明な点が多いにも関わらず、表示等の義務付けのない状態で出荷されることを問題視する声も多くあります。
●医療分野
遺伝子組換え技術等により、治療に必要なたんぱく質や移植に適した臓器を持つ動物を産生し、それをクローン技術で大量生産することや、実験用動物の大量生産等が期待されています。遺伝子改変マウスのクローン技術による量産技術が、先月末に民間としては世界で初めて日本の研究センターが成功を報告しています。臓器移植については、現在のところ移植を受けた人が動物の持っている未知のウイルスに感染するなどの危険性が指摘されています。
●絶滅の危機にある動物種の保存への応用
●人への適用
子供の欲しい夫婦が不妊の場合への応用、人の発生過程に関する基礎的研究などの科学的研究や患者自身による移植用臓器の産生などが期待されています。但し人への適用については、人間の尊厳などにかかわる生命倫理問題から、世界的に禁止される方向にあります。
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