1.屋上緑化とは
「屋上緑化」とは、ビルなどの屋上に芝や樹木を植えて緑化することです。屋上緑化自体は古くからありましたが、ヒートアイランド現象の緩和や景観対策として、近年注目を集めています。
造園業や住宅メーカー等で構成するNPO「屋上開発研究会」の推計では、現在の市場規模は年間500億〜600億円となっていますが、将来は東京都内だけで年間約500億円の新規市場が誕生するとしています。仮に全国の都市部で可能な限り屋上を緑化した場合、費用は19兆円を超えるとの試算もあり、建設不況と言われる中で確実な成長の見込める分野として、多様な業者が参入しています。
ただし一方で、未熟な技術による失敗例なども見られるほか、やみくもな緑化による生態系への悪影響などを危惧する声もあります。現在では、周囲の環境や生態系と調和したビオトープづくりが模索され、設計段階から屋上緑化を計画するケースも急増しています。
2.屋上緑化の種類
屋上緑化には、利用方法や対象建物の技術的条件などによって、「集約型」と「粗放型」の大きく2種類に分類することができます。集約型の緑化とは、屋上庭園、空中庭園などとも呼ばれる、集約的手法でつくられる庭園や緑地・公園など(ルーフガーデン)で、維持管理が必要となるものです。粗放型の緑化とは、自然に近いかたちで植栽され、ほとんど手を入れなくても維持されるもの(グリーンルーフ)で、ドイツの環境共生型住宅などに多く見られるものです。ドイツでは屋上緑化の9割は粗放型緑化であるのに対し、現在のところ日本では集約型緑化がほとんどとなっています。
3.屋上緑化の効果
国土交通省によると、屋上緑化には、次のような様々な効果があるとされています。
(1)身近な環境の改善効果
夏期の室温の上昇抑制や騒音の低減等、物理的な環境改善効果/安らぎ感や情操・環境教育の場としての機能等、生理・心理的効果
/火災の延焼防止等、防火・防熱効果
(2)経済的な効果
建物の劣化の軽減等、建築物の保護効果/夏期の断熱や冬季の保温等、省エネ効果/他、ビルの修景、未利用スペースの有効活用による宣伝・集客等、様々な効果
(3)都市の環境改善効果
ヒートアイランド現象の緩和、過剰乾燥の防止等、都市気象の改善/エアコンにかかる電力の低減等、省エネの推進/CO2、NOx、SOxの吸着等による空気の浄化/雨水流出の遅延や緩和等、環境低負荷型の都市づくりに貢献する効果
/潤いや安らぎ感を 生み出し、都市の快適性を向上する等、自然共生型の都市づくりに貢献する効果
/下水汚泥や廃コンクリート、廃発泡スチロール等リサイクル資材の有効利用により資源循環型都市づくりに貢献する効果
4.屋上緑化の課題
屋上緑化には、費用面や技術面など、まだまだ多くのクリアすべき課題があります。具体的には、次のようなものを挙げることができます。
(1)建築物の構造的な問題
屋上を緑化するには、土や植物、水などの重みに耐え得る強度が必要となりますが、一般
にビルを経済的に建設するには軽量化することが求められます。特に既存の建物 については、こうした荷重に耐えられる構造とはなっていない場合が多くあります。
(2)植栽土壌の問題
軽量土などの新素材の開発が進んでいるものの、多量の水を必要とする種類が多い国内の植物に対応し得る保水力を兼ね備えたものとするにはさらなる研究開発が必要です。現在、セダムと呼ばれる植物を利用したシートなどを敷き緑化を図るのが主流と
なっていますが、これは緑化目的の一部には不向きの植物であるとも言われています。
(3)維持管理の問題
潅水施設の有無や管理者の有無も重要です。植替えなどの手間や費用など、維持管理も含めた計画が必要となります。また、「屋上」は遮蔽物がないため日光は直接あたり風も強いという特徴があります。非常に乾燥しやすく植物の生育にはかなり苛酷な環境と言え、植物の選択には十分に注意を払う必要があります。
5.屋上緑化の支援体制
2001(平成13)年4月に、東京都は自然保護法を改正し、敷地面積250平方メートル以上の公共施設と、1000平方メートル以上の民間施設の新改築の際、利用可能な屋上面
積の20%以上を緑化することを義務付けています。20万円以下の罰金の罰則と、容積率の割増や工事費用の助成・融資などの支援策も設けられています。東京都では、これにより15年間で1200haの緑化空間が生まれ、23区内の「みどり率」(緑地に水辺などを加えたもの)は現在の29%から約32%にアップするとしています。
また、国土交通省は同年5月に「都市緑地保全法」を改正し、市町村長の認定を受ければ施設の固定資産税の半分が減免されるといった支援策を創設し、8月に施行しています。現在東京都以外では兵庫県が市街化区域で同様の緑化を義務付けているほか、全国約30の自治体が補助や助成、低利融資をしています。
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