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酒類販売の規制緩和

1.規制緩和の経緯

 酒類は、特殊な嗜好品として、従来から他に比べて高い税負担が求められてきました。この重要な財源である酒税を、円滑かつ確実に徴収することを目的としてつくられたのが、酒販免許制度です。酒販免許制度は、酒造税法等において、1938(昭和13)年に導入されました。その後1953(昭和28)年に施行された現行の酒税法に引き継がれ、改正を繰り返しながら約60年にわたってその枠組みが維持されてきました。

 酒類の販売を行う場合には、税務署長の免許を受ける必要があり、税務署長は、申請者に対する免許の可否を判断するに当たって、滞納処分歴、犯罪歴、経営能力等の「人的要件等」のほか、酒類の需給の均衡を維持するために、「需給調整要件」について審査を行うこととされてきました(酒税法第9条、第10条)。

 この「需給調整要件」としてあげられていたのが、販売店間に一定の距離を置く「距離基準」と、一定区域内で一定の人口(基準人口)に1つの免許を割り当てる「人口基準」の2つの規制でした。

※距離基準: 申請販売場と既存の販売場との距離が、大都市部及び地方都市部では100m以上、町村部では150m以上であること。
※人口基準: 大都市部では1500人に1場、地方都市部では1000人に1場、町村部では750人に1場 として、市区町村を単位とする小売販売地域ごとに免許枠を設定し、免許付与を行う。免許枠を上回る申請があった場合には、抽選により審査順位を決定する。

 しかし、酒類免許制度の導入当時とは、酒類の生産・流通各段階における経営や取引の状況は大きく変わりました。日本における需給調整のための免許制度は、一般的に市場への新規参入を阻害し、消費者利益の向上や流通の合理化を妨げるという問題が広く指摘され、1998(平成10)年に政府が打ち出したさまざまな分野の規制緩和の一環として、酒類販売免許も緩和されることとなりました。1998(平成10)年から段階的に緩和が始まり、2001(平成13)年1月には「距離基準」が撤廃、2003(平成15)年9月に「人口基準」が撤廃され、原則自由化されました。

2.他国における規制

 酒類販売についての免許制等は、欧米諸国においても多く採用されています。ただしその目的は、「社会的な規制」という面 が強く、多くの場合ウイスキーなどのハードリカーとビールやワインなどのソフトリカーでは異なった取り扱いが行われています。

 規制はたとえば、カナダや米国カリフォルニア州等では専売制や人口基準により免許場数を制限する免許制が採用されていますが、主に酒類の社会的規制から採用されており、日本の場合とは目的が異なっています。また、フランスや米国ニューヨーク州等でも免許制は採用されていますが、人的要件等の審査のみで免許が付与されています。ドイツでは免許制等は採用されていません。距離規制に関しては、日本のように酒販店間の距離を規制するものは見られず、米国などで学校、協会、病院などの文教・医療施設などからの距離規制が行われています。その他、多くの国で販売時間の制限が行われ、フランス等では法律で自動販売機での酒類販売の禁止、広告宣伝の規制等も行われています。

 日本における社会的規制に関する法制度としては、未成年者飲酒禁止法や道路交通 法による酒酔い運転の禁止のほか、酒類業組合法による未成年者飲酒防止の関する表示基準などがありますが、必ずしも十分ではないと言われています。

3.規制緩和の影響 

 成熟期にあるアルコール飲料市場は、焼酎などごく一部を除いて低迷が続いており、今回の自由化にあたっても、酒類市場全体が底上げされるとの期待はほとんど聞かれません。むしろ、全体の市場が伸びない中で販売店が増えることで競争が激化し、1店あたりの売上は減る可能性があるとの見方が強いようです。

 今後、スーパーやコンビニエンスストアだけでなく、ホームセンター、ドラッグストア、宅配ピザ屋、100円ショップ、ビデオレンタル店、花屋など、これまで扱いのなかった様々な業種からも参入が相次ぐ見通 しとなっています。サントリーの推計では、全国11万店余りある酒販店が、自由化を機に今後2年間で約1万店増えるとしています。

 酒類の売り方も多様化することが予想される中、酒類メーカー側は自由化をにらんだ新商品の開発や営業強化に乗り出しており、つまみ類などの周辺商品メーカーも活気を帯びています。

 一方、一般小売店では苦戦が懸念されています。これまでの規制緩和によってですら客の流出が起こり、小売店間での格差が生じています。

4.緊急措置法の施行 

 規制緩和が進むなかで、酒の小売のうち一般酒販店の販売量割合が、1990年度の8割台から2000年度には5割台に落ち込んでいます。業界団体「中小酒店全国小売酒販組合中央会」では、1998年以降の5年間に転廃業・倒産が約2万4千件あったとしています。

 こうしたことから、今年4月、「酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法」が制定され、7月から施行されています。これは、2005(平成17)年8月末までの時限立法で、規制緩和で経営が困難になる酒販店の割合が高かったり、酒類の供給が過剰になるといった一定の条件を満たした地域を、税務署長が「緊急調整地域」に指定し、1年間は新規出店を認めない内容となっています。

 この救済策は、規制緩和による衝撃の緩衝を目的としたもので、規制緩和に逆行する動きとして「逆特区」とも呼ばれ、全国の3割近い922地域が調整地域に指定されています。



 



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