1.知的財産権とは
「知的財産権」とは、人間の知的精神的な創作や、産業活動上の識別
標識に関する権利を指します。
あらゆる産業や芸術は、先人の業績を基礎に発展します。しかし多額の資金や膨大な時間をかけて開発された発明や育成された商標などを、誰もが全く自由に利用できるとすれば、新たな投資意欲が失われたり新たな技術が隠されるなどして、創作活動や産業の発展が阻害されかねません。また商標等の濫用により、商標を育て上げた企業の信用が害されたり、偽物をつかまされるなど消費者利益に反する事態が起こる可能性もあります。
こうしたことを回避するために、人間による「知的創作物」や「営業上の標識」について、一定期間に限り排他的な独占権を認めるのが、知的財産権制度です。知的財産の「権利者の独占権」と「第三者の利用」のバランスを適正に保つことで、産業の発達または文化の発展に寄与することを目的としています。
なお、「知的財産権」という言葉は英語の「Intellectual Property Rights」の訳語で、同じような意味で「無体財産権」あるいは「知的所有権」と呼ぶこともあります。
2.知的財産権の分類
知的財産権の分類には、保護の目的に着目した方法と保護の対象に着目した方法がありますが、近年の法改正や技術革新の影響で、これまでの方法では分類しきれなくなっているのが現状です。
保護の目的に着目した知的財産権の分類
3.知的財産制度をめぐる動き
近年の技術革新、国際化の進展などの影響により、知的財産法制も様々に変化しつつあります。
(1)国際的な動向
知的財産権は、基本的に権利を取得とした国の主権のおよぶ範囲においてのみ効力があります。しかし「無体物」である知的財産は国境を越えて流通
しやすく、また情報通信技術の発達により世界のマーケットが一体化しつつあることから、保護制度の「国際的な調和」を目指す動きが活発化しています。まずは取得手続きの面
で、近年では実体面での調和を目指す動きがあります。
また、米国に端を発したプロパテント政策(特許権をはじめとする知的財産権の保護を強化する政策)の動きが、世界各国に広がっています。プロパテント政策のもとでは、多くの企業にとって知的財産権が企業の存続をも左右しかねない重要なものとなることから、企業の知的財産戦略が不可欠となりつつあります。さらに、従来の知的財産制度では想定していなかった様々な新しい技術も生まれていることから、その対象範囲も拡大される傾向にあります。
(2)日本における動向
日本では、米国の対日要求や国際化への対応などから1985〜1990年に知的財産法が改正されはじめましたが、国家戦略として明確にプロパテント政策が採用されたのは、1990年代後半です。背景には、アジア諸国の低価格商品攻勢(独創的な高付加価値商品開発が必要となった)、1990年代前半の「日米特許摩擦」(多くの日本企業が多額の損害賠償金を支払わされ、日米の特許保護政策の差が浮き彫りとなった)、国際競争力強化の必要性から知的財産への認識が高まったこと、などがあります。
プロパテント政策として特許庁では、(1)創造された技術を特許権として適切に保護し、(2)特許権を適切に活用して経済的利益を生み出し、(3)その経済的利益をさらなる創作活動にあてる、という「知的創造サイクル」を円滑に循環させることによって、産業の発達を図るべきであると説いており、「強い」「早い」「広い」権利に向けた政策が施行されています。また、特許法以外の知的財産法についても、情報通
信技術の発達への対応など、権利保護が強化されています。
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