2.交渉をめぐる誤解
さらに交渉にまつわる誤解の具体例を挙げてみましょう。よく手強い交渉者という意味で、『タフネゴシエーター』という言葉を耳にします。この言葉からどのような人物像を想像するでしょうか?強引で、駆け引き上手、ウソと脅しをうまくとり混ぜて、自分の取り分を少しでも多くしようとするいわゆるカリスマ「ハッタリ営業」人。こんな感じでしょうか?
このやり方は交渉の在り方として果たして、正しいものでしょうか?答えはNoです。もちろん、気弱で説得されやすい担当者と向かい合ったとき、短期的に成果を出すことは可能です。しかし、この手法では新たな顧客と長期的な信頼関係を築くことは不可能ですし、既存の顧客との間では培ってきた信頼関係が一瞬にして壊れてしまう可能性すらあるのです。特に、担当者同士の口コミは恐ろしく、我々が思っている以上、企業間の担当者のネットワークは強力なのです。
このように、御用聞き営業も、ハッタリ営業も、顧客と相互理解をすすめるためのコミュニケーションが行われていないということです。
3.交渉のテクニック
交渉に入る上での心構えなどの全体像を見てきましたが、交渉を効果的に進めるために有効な具体的なテクニックとしてどのようなものがあるのでしょうか。ここでは3つほど見ていきましょう。
(1)実績紹介
これは、顧客に初めて自社を説明するときに、自社の概要や売上規模などを話すよりも、過去の成功事例や取引先を示したほうが信頼を得られやすいという事実に基づいたものです。
あまり自分では気付きづらいのですが、どうしても自社の製品やサービスの営業トークをしていると、知らず知らずのうちに「独りよがり」の説明になることが多いのです。相手にしてみると、競合を含め多くの説明を聞いているので、「それが有用かどうか」という議論ではなく、「それが、競合製品と比べて、どの程度良いのか(安いのか)」という具体的な部分の説明が入らないと、判断のしようもない、というのが実際のところなのです。
それらの具体的な説明と関連して、「だからこのような有名企業も、うちの製品の採用を決めてくれた・・・」という実績紹介に結びつくのです。
(2)ブーメラン
顧客が自説に自信を持っており、提案した内容と折り合いがつきそうになく、顧客が猜疑心の強いタイプである場合、このテクニックは有効です。ブーメランは遠くに投げようとすればするほど、戻ってきます。それと同じように、顧客の言い分を徹底して肯定、賞賛することによって、逆に顧客自身に疑いをもたせるのです。但し、自信家にこのテクニックを使うと、自信を持ってしまい、全くこちらの提案が受け入れられない可能性があります。状況により、(戦略としてではなく)戦術として使い分ける必要があります。
(3)選択肢限定
顧客に意思決定を迫る際にYESかNOの二者択一ではなく、自社に有利な答えを自然とお客が選んでしまうように質問するというものです。例えば、顧客に競合から自社商品への乗換えを勧めたい場合、「競合の商品で少し問題があると思われる点はどこですか?」 「弊社と比較して競合のどの部分に満足していませんか?」と、競合の欠点を述べさせる質問を連続的に行うパターンや、「自社製品を納入していただくためのポイントを2、3挙げていただけませんでしょうか?」と質問します。こうすることによって、交渉の頭からチャンスを奪われる事はないはずです。但し、お客側に誘導的されている感じを抱かせてしまう可能性があるので、注意が必要です。
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