携帯電話で新商品情報が見つかった!すぐに買ってみよっと。いくらコンピュータやインターネットが普及したとはいえ、仕事に関係の無い私には縁の無いものだった…。でもデジタル家電なら使える!
「近未来」と申しますと、どうしてもハードウェアありきの話しになります。もちろん、その方が考えるのが簡単です。しかし、そろそろ水素で動く自動車も現実性を帯びてきているような…というようは話しまではしません。
ここでいう近未来とは、これから数年の内に起き得ることを指します。
■変わりはじめている世の中
今世の中は大きく変わりはじめています。この変革はかつてアルビン・トフラーという人が今から20年くらい前に書いた「第三の波」という本の中に書かれていたことが本当に来ちゃった、という変化です。経済史の視点からすると(私は専門ではありませんが)、75年周期というのがあって、今からちょうど75年前に世界恐慌が起きていました。しかしその前からフォードやエジソンが現れて今日の基盤となるものが芽を出しはじめていました。
今はどうでしょうか?この変化は昨日今日はじまったものではありません。私が専門とするダイレクトマーケティング(人によってはワントゥワン、CRMと言いますが)だってすでに1920年代からその原型とするものがあったようです。いえいえ、日本では富山の薬売りが350年も昔からやっています。富山の薬売りは見事に、ダイレクトマーケティングの理論と合致します。
75年周期を前提とすると、これから約25年は新しいものがどんどんと出てくるのだそうです。前の75年前がそうでした。鉄鋼、石油、自動車といったいわゆる重厚長大型のビジネスがどんどんと発展していきました。その次の約40年間はそれまでに出来上がったものを成長させる時期。ここでは新しいアイデアよりも、着実に伸ばしていくことが重視されます。私たちの父母はこの時代を生き抜いてきました。そして最後の10年は次の時代を受け入れるため、それまでのものが衰退していきます。
■マーケティングに興味を持つ
ただ、今の企業はどこも力をつけているため、変化することを決心してしまいさえすれば、それなりに生き残ることができます。例えば、メーカーからはベルトコンベアがどんどんと消え、セル生産方式というのが広まっています。いわゆる多品種小ロット時代の対策です。また、工場労働者には熟練度が要求されるようになるので、ここで彼らは知的産業の人となってしまいます。
私たちの生活もどんどんと変わっていきます。普段は一消費者である私たちは、売る側になるとどうしても買う側の気持ちがわかりにくくなってしまうものですが、「私はあの人と違うものが欲しい」「どうして私とあの人は同じ扱いを受けているの?」こういう疑問が起きてしまう世の中では、社会主義などという政治思想も行き渡ることはまず不可能でしょう。
資本主義だって今の視点からすれば、かなり社会主義的なところがあります。
モノを作れば売れる、というのは計画通りにコトが運ぶということ。しかしひとりひとりが知識を持ち、自分の意思をはっきりとさせる時代には、売る側の思惑通
りにはいきません。だから多くの企業がマーケティングに興味を持つようになるわけです。
■プロダクトアウトからマーケットインへ
そのマーケティングもこれまでは「買い手は買いたいと思っている」という前提で考えられていたのでしょう。だから商品を並べれば売れた(プロダクトアウト)。しかし顧客ひとりひとりの要望を聞き出さない限り、売れることは有り得ない(マーケットイン)。
このプロダクトアウトからマーケットインへの切り替えというのは、プロのマーケターにとっても、相当に難しいことのようです。
まずは商品ありき、とどうしても考えてしまいます。しかしマーケットインを前提とする場合、まずは顧客との対話(ダイアログ)がありきです。マーケティングを習った人なら誰でも知っている、いわゆる4Pモデルの崩壊です。
顧客が優先させるというのは顧客中心のマーケティングを唱えている私でさえ想像を絶することが起きています。
たとえば、2ちゃんねるや価格ドットコムの出現によって、買う側は事前に評判などを聞いてから買うようになってしまっています。もちろん、2ちゃんねるの評判はすべてが本当であるとは限らないのですがそれを見極める力も我々は身につけ始めています。買う側からの反応は瞬時にして現れます。瞬時にして現れて、瞬時に購買行動へと移ります。
これまでの連載で、私はクローズドループと言う話をしておりました。あれは確かに顧客中心に考え方なのですが、しかし必ずしもそうではないときがあります。携帯電話に新商品情報が現れたり、これからの時代ならデジタル放送で新商品情報が出ればお客さんは瞬時にして商品を選択する可能性が出てしまいます。
商品を認知(awareness)してからいろいろと考えて、検討してから購買という行動に移る(action)というAIDMAモデルの崩壊です。AA、つまり認知してから直ぐにその場で買ってしまう、あるいは即行動。テレビショッピングを楽しむ人たちがこれだけ増えてしまったのも、私がこの世界に入った頃はひとつのトピックに過ぎませんでしたがいまや周囲を見渡して多くの人たちがやっています。ちなみに、通販市場は2兆6000億円。対GDP比では昔から変わらないのですが、伸びていることは事実です。もうしばらくすると、携帯電話などで銀行の貯金残高を確認して即購入をする、というのもごく普通の姿になるでしょう。
通信販売はファッションや家具などに限らず、最近ではスーパーマーケットが生鮮食料品を届けるのにもやっています。リアル向きか?ネット向きなのか?を判定する定式もあるようなのですがそれとて時代によってこれまでネット向きとはされなかったものがネット向きとなるのかもしれません。
■近未来のマーケティング
知識社会では、多くの人が常にリスクとパフォーマンスを考えて行動するようにもなってきています。株式のネット取引や証券化された不動産投資(リート)の出現によって、これまで一部の人しかやらなかったことが一般の人にまでどんどんと普及しています。サラリーマンをしながら、一方で不労所得を得る方法がどんどんと公開されています。不労所得が増える人が増加すれば、当然買物の仕方だってどんどんと変わっていきます。もしかしたら経営者VSサラリーマンという構図も変化してしまうかもしれません。
ムダとの戦いというのもあります。インターネットやコンピュータはそれを可能にしてしまいます。必要な分だけ生産する体制も前述のセル生産の出現など着々と出来つつあります。
人は習慣の動物であるとされています。だからその変化に気がついていてもなかなかそれを受け入れるのは難しいです。ましてや自分が教わったマーケティングの基礎理論まで捨て去らなければならないとしたらどうでしょうか?
そうです、専門家でさえ迷ってしまっているのが今の世の中。これからどうなるのか?「そんなこと有り得ない」という考え自体が有り得なくなっています。
だからこの連載を通じて、これから数年の近未来社会で起き得ることを考えるきっかけとしていただければと思います。
それで自分たちが何をしなければならないのか?そこにビジネスのヒントがあるのでしょうし、私自身の課題でもあります。
もうバブル崩壊の悪夢のことなんか遠い過去のこと。それよりも、新しい時代に向かって、楽しく考えていければと思います。
次回から、さまざま視点から、この近未来のマーケティングについてお話してみたいと思います。
|