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講師紹介


細野晴義
(ほそのはるよし)

1965年生まれ。マーケティング・コンサルタント。電通ワンダーマンダイレクト(現・インピリック電通)を経て、99年、ニューロ・テクニカ(現・取締役社長)設立。数多くのDRM関連のマーケティングをプロデュース。現在はDRMセミナー講師から事業プロデュースを中心に行う。企画立案のスキルにおいて、現役マーケターNo.1の呼び声が高い。著書「パワーポイントでつくる企画書ベスト事例集(翔泳社)」はアマゾンで総合ランク最高28位、企画書解説本としては一年間一位をキープ。全国でDRM関連の研修、セミナーを行い、DRM関連専門誌Impressでは連載執筆、座談会司会をする。

【URL】
http://www.neuro-technika.com/index.html


    ■第5回    だんだんと買うようになる、すぐ買うようになる(2)  
 

 前回、すべては顧客が決める、マーケットインの話をしました。たまたま私がこのような仕事をしているからかもしれませんが、相談内容の多くがこれに共通します。「ただモノを置いているだけではダメだ…」「新製品です」といっても、「だから?」と聞かれてしまう、という悩みも多く聞きます。あくまでも、それは買う側にとってどういうメリットがあるのか?何のために買うのか?ということを示さなければいけません。ダイレクトマーケティングの世界ではそれをオファーと言います。

 さて、マーケットインの前提のもと、今回は顧客の購入モデルについてお話します。

■だんだんと買うようになる〜クローズド・ループモデル

 これまで、マーケティングは「顧客は買いたいと思っている」という前提に立っていたと思います。だから、モノを置いていれば売れたわけです。しかし今や顧客は「欲しいものは欲しい、要らないものは要らない」とはっきりと意思表明をしてしまう時代。そういう時代には相手にとってどんなメリットがあるのか?まさに前回お話をしました、お客様との対話を通じて販売をしていく必要が出てきます。そのことを体系化させたのがクローズドループモデル(図D)という考え方です。

 クローズドループとは、閉ざされた環(わ)の意味。まったく関係が無かったお客様を自社の環の中に引き込んでいきましょうよ、というのがねらいです。最初はもちろん、ブランドイメージも大切ですし、何かしらのきっかけづくりとしてマスメディアでの告知なども必要です。※ ダイレクトマーケティングを標榜する人にはマスメディアを真っ向から否定する人もいますが、現実はそうではありません。

 このクローズド・ループモデルの上部には、顧客の気持ちの変化が示されています。これはハワード・シェスの購入モデルと呼ばれるものをベースにしていますが、みなさんおなじみのAIDMAと同じようなものです。要は、お客さんはそうそう自社製品を買ってくれない、という前提に立つわけです。

 その下には、ブランド認知、見込み客獲得、見込客醸成、顧客維持といったステップが並びます。これは顧客の心理変容に対して、売る側がなすべきこと、対話をつくる際に目標とすべきことです。このうち、昨年あたりまで話題だったCRMは最後の顧客維持のステップを示しているに過ぎません。CRMは確かに有効な戦略ですが実際には70%は失敗していると言われています。その大きな理由のひとつが、この3つのSTEPを無視してしまっているからです。

 私はCRMというのはなんか顧客(人間)をモノとして扱っているようで好きではありません。実際、通販をやっている方にうかがってみると、顧客というのはいつか離れていくものなのだそうです。どうしてかって?よくマーケティングの世界ではロイヤルティという言葉が出てきますが、売る側に対してのロイヤルティって早々出てくるものではないです。確かに、ホンダマニア、ソニーマニアという言葉があります。しかし人というのは気まぐれなもの。ある日突然他の会社の商品が好きになることだってあるわけです。だからこそ人間はおもしろい!

 経営学の世界でも、ピーター・ドラッカーによれば、「現顧客だけに注目をしているといずれその会社の経営は立ち行かなくなる」とあります。だから常に、新しいお客さんを補充していかなければならない。そのお客さんは自社製品だけでなく、いろんな会社の製品を比較しています。最初は自社のことだってよく知らないかもしれません。そうすると場合によってイメージによる訴求だって大切なこともあるわけです。

 さて、このクローズ・ドループを描くのは営業マンの方法とまったく同じです。この営業マンはプロフィット(利益)を生み出す人、という言い方もできますが、しかしモノを売るのに人を雇う(コスト)という矛盾にも直面します。もし営業マンがいないのに売れるのであればもっと利益があがるのではないか?という素朴が疑問です。それに応えるのがクローズド・ループ。実際に私は、少ない営業マンで最大の効果 をあげている企業をいくつも見てきました。クローズド・ループの下動くと、営業マンも楽です。なぜかというと、買うかどうかわからないお客様はすべて広告やフォローアップのためのE−mailやDM、テレマーケティングなどがやってくれるからです。そして「興味があるので」「相談があるので」と意思表明をしたお客様とだけ接触をすればいいわけです。すでに相手のリクエスト内容は自社のお客様センターが聞きだしています。成約率は当然あがります。

 私の経験では、こうした仕組みを作ってもうまくつかいこなせる営業マンとそうでない営業マンとに二分されます。そして、このクローズド・ループモデルを使うと広告活動から営業行為になります(図E)。マス広告、DM、E−mail、WEBサイトなど、どんな方法を使うにせよ、このようなメッセージの流れを作っていきます。WEBサイトの場合、この一連の流れをひとつの画面で提示することができます。はじめてやってきたお客さんと何度もやってきているお客さんが見るコンテンツを変えてしまうわけです。

 営業マンの気持ちになって作る広告・販促コピー・デザイナーはお客様との対話を生み出します。そして社内も自然とマーケティング部門と営業部門とが連携するようになります。

■すぐ買うようになる〜認知→即購入!

 ダイレクトマーケティングを専門にしている私にとって、このクローズド・ループモデルは何を置いても基本中の基本です。私がこれまで行ってきたプランニングはすべてこのクローズド・ループを基盤にしています。クローズド・ループモデルは私にとって最上位 概念に位置します。それだけ絶対ものと信じてきました。

 ところが、今新たなメディアに取り組んでいる私は必ずしもこれが絶対ではない、ということをつい最近知りました。クローズド・ループモデルは見込客獲得 > 見込客醸成 > 顧客維持という大きく3つのSTEPで構成され、それぞれに適切な方法をあてます。それは必ずしも広告や販促活動ではなく、営業マンが加わって一連の流れ、顧客との対話を作ります。それは顧客が段々と買うようになるということを前提としているためです(購入モデル)。

 さて、その購入モデルに少し着目をしてみます。顧客の気持ちは、最初にまず自社を認知してもらうところから始まります。これは間違いありません。私の経験でも事前に認知を十分に行っているところとそうでないところとではレスポンスに倍の開きが出ます。もっと具体的にいうと、DMやE−mailを行うにも、先にマスメディアをやった方が効果が出る、といった具合です。

 しかし、今テレビを見ていても携帯電話やWEBサイトと連動をしたりするものが増えています。この間もある日曜日の昼間の番組で、準レギュラーとなるべきタレントを、視聴者に投票してもらう、といったことをやっていました。これがもしデジタル放送となったらどうなるのでしょうか?  番組放映中に今そこに出ているタレントが身に付けているものや、グルメ・旅行番組であるならその旅行商品をその場で募集することだってできるようになります。

 BSではすでにデジタル放送ははじまっていますし、地上波デジタルは昨年12月からスタートしました。まだまだテレビ局側もこのデジタル放送をどのようにして扱ったら良いのか?困惑しているようですし、一般にもそれほど知られていません。その場で物販が行われるのであればCM出稿をしているスポンサーとの関係をどうするのか?といった問題も出てきます。一筋縄ではいきません。地上波デジタルについては再来週あたり、もう少し詳しくお話をしますが、いずれにしても、これまで一方通行だったマスメディアが、途端に、レスポンスが取れるメディアへと変貌してしまうわけです。そうすると、「あ、それ気に入った!」と思ったら、携帯電話で銀行残高を確認してそのままお買い物、っていうことだって出てくるかもしれません。

 つまり、 認知→即購入! といった図式になってしまうわけです。(図F) そうすると、視聴率という考え方もそれでいいのか?という問題が出てくるかもしれません。現に、私のようなダイレクトマーケティングをやってきている人間からすると、どんなに視聴率がいい番組であっても、どんなに統計上閲覧率が高い、あるいは発行部数が大きいとされる新聞・雑誌であってもレスポンスの取れないメディアはよくないメディア、となってしまいます。

 これだけの大きな変化が起きてしまうとなると、正直なところ、私もまだ答えが出ていません。私も断言してしまっていいものかどうか?とても迷いがあります。しかしすべてのテレビが地上波デジタルになるのはそう遠くない話ですし、マーケットの姿も、企業側も1〜2年前とは大きく違っているはずです。「そうそうそう、そういうのがあっていい」 と思われる方も多いのではないでしょうか?

 次回はいよいよ今起きている新しいメディアのひとつとして、CATVを扱います。

 


 



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