■同じ会社でしょ!
さて、前回まで、「サッカーのような…」と題したのには理由があります。丁度そのときに、私がサッカーの試合をテレビで見ていたから、というのもあるのですが、およそ「何かを攻め落とす」というときに、あのサッカーの方法はいわば鉄則なようものです。一説に、サッカーは元々狩猟民族のもの。今でこそ、スポーツしていますが、元々は獲物を追っかけていた時代の流れです。私たち日本人にはそういうDNAがほとんど無いのでそれでなかなか今日まで勝てなかった理由だ、と指摘する人もいます。
何はともわれ、その狩猟民族の習性も、今やちょっとテレビをつければ見ることができる時代になりました。つまり、身の周りにあふれている、ということを私は例としてあげてみたかったのです。なお、前回までに行った方法は、外資系企業では極普通に行われている方法です。マーケティングとはいい悪いは別
にして、元々兵法(=要するに戦争の仕方)から来ておりますが、このサッカーの試合をよく眺めていると世の中で行われている戦争とも行われていることがそっくりです。日本の軍事ジャーナリストの多くが予想を外すことが多いのも、おそらく私は農耕民族であるからだと思っています。
さて、話を元に戻します。いくら私が身の周りのもの…といってサッカーを例にしたとしても、「私はサッカーなんて興味がないから」といわれてしまうかもしれません。それならば、もっと、あなた自身の場面(ドラマ)に移し変えてみましょう。
この文具メーカーを仮にA社としましょう。A社は決して大手ではないのですが、独創的な製品を持っています。また、文具といってもこの会社の取り扱い領域はとても広いものでした。一般事務用品、ソフトウェア、ファンシーグッズと異なる3つのブランドをもち、それぞれがまったく異なる営業をしておりました。
あるお店に対して、ある日、こんなことが起きました。
●3つの事業部(ブランド)それぞれの営業の人がお店に出向いた。
●3つの事業部(ブランド)それぞれからDMがやってきた。
また、こんなことも起きました。
「お問い合わせはこちらに」とDMに書いてあったのでコールセンターに電話をした。後から営業の人からまったく異なる案内があった。
おそらく、つい3〜5年ほど前までは、それぞれの事業部から営業の人が出向けば、
「お、おたくは熱心だねえ」 と喜ばれたことでしょう。
また、仮にDMに書いてあるメッセージが何であろうと、営業の人の言葉を優先させたことでしょう。
前回までに示した3つのSTEPはとても効果がありました。しかし反響があったが故、これまでならたいして問題とならなかったことが起きてしまったのでした。それが、「え?同じ会社なのに、どうして言うことが違うの?」という素朴な疑問がたくさん寄せられたことにあります。これでは、せっかく営業効率を考えて行った、先の3つのSTEPが台無しになってしまいます。
そこでこの会社は社内の大改革を行うに至りました。既存の組織をたいしていじることなく、です。また、その大改革を行うにあたり、それぞれがロールプレイングを行ってお客様が考えていることを知ろうと試みました。そうするといろいろなことが分かりました。
A社営業担当者の役と、取扱店の役と2手に分かれて考えてみました。
A 社:○○さん、今回もお願いしますよ。今月ちょっと売上足りないもので…。
取扱店:それはおたくの勝手でしょう。そんなことより、うちは今度新社会人フェアを行いたいのでそれに見合った商品をみつくろってきて欲しいのですよ。
A 社:(カタログを見せる)
取扱店:A社さん、お願いしますよ、一般事務用品だけじゃなくて、このファンシーグッズだって若いOL向きにもよさそうじゃないですか。
A 社:いや、それは部署が違うもので。
取扱店:コールセンターの方が柔軟に対応してくれるね。それよりもさあ、こういうもっといいものがあるのに、どうして教えてくれないの?
A 社:え、このあいだパンフレットお持ちしましたけど。
取扱店:パンフレットもねえ、いろんな会社から来るからもう分からないのですよ。うちは文具専門店じゃないでしょう。だから、うちみたいなお店でも分かるものが欲しいね。
このロールプレイングは私がよくお勧めする方法です。こうしてみてみるとさまざまな課題と解決策が浮き彫りになります。
どうでしょうか?「つながりをつくる」というのはどうやら自社と顧客との関係だけではないようです。むしろ社内にも大きな問題がありそうです。 これまでマーケティングの世界ではこうした問題にはあまりふれてきませんでした。マスメディアをしましょう、折込やりましょう、DMやりましょう、ホームページ作りましょう。
だけど何で? 当然それは、顧客をつかみたいからではあるのですが、「○○やりましょう」というのは品物を軒先に並べれば売れる時代の方法。しかし今は違います。買う側はとても慎重です。だから「つながりをつくる」必要が出てきます。
私は元々広告会社にいた人間ですが、今やマーケティングというのはこうした問題にも応えて行かねばならない時代となっています。
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