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講師紹介


細野晴義
(ほそのはるよし)

1965年生まれ。マーケティング・コンサルタント。電通ワンダーマンダイレクト(現・インピリック電通)を経て、99年、ニューロ・テクニカ(現・取締役社長)設立。数多くのDRM関連のマーケティングをプロデュース。現在はDRMセミナー講師から事業プロデュースを中心に行う。企画立案のスキルにおいて、現役マーケターNo.1の呼び声が高い。著書「パワーポイントでつくる企画書ベスト事例集(翔泳社)」はアマゾンで総合ランク最高28位、企画書解説本としては一年間一位をキープ。全国でDRM関連の研修、セミナーを行い、DRM関連専門誌Impressでは連載執筆、座談会司会をする。

【URL】
http://www.neuro-technika.com/index.html


    ■第4回    並列試行と直列試行(1)  
 

 わたしたちは農耕民族の流れをひいています。それ自体は別にわるいことではありません。しかしこれだけ世の中に境界がなくなってしまうと、そうした内輪の事情が通じにくくなってしまいます。
 前回までにあげてみた「サッカーのようなマーケティング」はその1例です。ひとつのゴールをねらうのに、複数の方法で攻めてみる。

 「な〜んだ、それって要するにメディアミックスじゃん」

と思われるでしょうけど、ちょっと違います。

 さて、今回から今後マーケティングを考えていくのにあたって必要な考え方を、事例を通じてご紹介していきます。そしてこのビジネス最前線は、より個々のマーケティングの現場、メディア、DM、WEBといったことに、領域をせまくして解説をしてまいります。

■テストをした方が安上がり

 さて、「テスト」ときくと、私たちはぞっとするものがあるかもしれません。子どもの頃、点数が届かなくて親に怒られたとか、進学に支障が出たとか…。しかしマーケティングにおけるテストというのはそういうものではなく、むしろ起き得るリスクを最小限におさえてくれる、ありがたいものです。

 ある会社が健康食品を出そうとしました。事前に市場調査を行いました。市場調査ではその会社の商品は間違いなく、「40代の男性に売れる」という結果が出ました。健康食品というと一般には女性向けがほとんどですが、その商品は「仕事のあとの疲れをいやす」ということから、男性向きという結果が出たわけです。 この会社がこれまでの顧客データベースを使ってダイレクトメールを行いました。DM送付先は市場調査の結果に従って40代男性としました。しかしここで私は疑問を持ちました。

 「そうはいっても、これだけ女性が社会進出をし、ある意味女性もおやじ化している時代に、男性ターゲットだけ、というのはないでしょう。それに、元々健康食品の主力ターゲットは女性」 私はその調査結果を詳細に見たわけではありません。私の皮膚感覚からです。 そのDMは全部で4万件ほど出しましたが、うち、5000件は女性にすることにしました。

 そしてふたを開けてみると…、女性からの反応がトップで男性からの反応はあまり芳しくありませんでした。

 ここで皆さんも考えてみてください。
 もし、市場調査の結果に従って、男性だけをターゲットとしていたらいったいどうなっていたでしょうか?もちろん、たかだが5000件からの注文です。女性からの注文数は50件にも達しませんでした(約1%)。男性からのものは、全部で140件ほど(約0.3%)。絶対数では女性よりも上回りますが、注文率は女性の方が断然上です。もし女性ターゲットを無視していたら、1件の注文を獲得するのに、倍以上のコストがかかったということになるわけです。

 テストというのは、

  • 実際の販売活動や、資料請求などのプロモーション活動を行いながら効果を測定することができるので、市場調査よりも正確です。
  • 小規模でも実際の販売活動などを通じて傾向を把握しておけば、次回自信を持って大量投下(ロールアウト)が出来ます。

 通販をやっている人、ダイレクトマーケティングをやっている人たちは口をそろえてこのテストの重要性を主張します。私が言っているのではありません。国内ばかりか世界中で言われています。しかしこれまで日本国内ではテストするというと、

「実験なんてするお金はない!」

といわれたものです。

「そんなお金があるのならとにかくばらまけ!」

今思えば、こうした発言はとてもバブリー。

 薬は臨床実験を経なければ市場へ出すことはできません。建物は耐震実験をしなければ建てることができません。風洞実験をしない飛行機なんてありえません。これらのものも、実験をするのには確かにお金がかかります。しかし実験をしていなかったら、万一のことが起きる可能性が高くなります。そのときの損害は実験に要した費用とは比較にならないはずです。 工業製品ではさすがに直接人体に影響がでてしまうので、1度にいくつもの方法で、多角的にテストがなされます。

 マーケティングもまったく同じこと。テストをすれば大きな被害を食い止めることができます。最近は企業の方もお金の使い方に慎重になってきているので、テストを勧めると納得することが多くなってきました。

 このテストというのは、1度に複数の事を行います。 同じ時期に、異なる方法で実際の販売活動、広告・販促活動などを行い、その中でもっとも良かった方法を採択し、後にその拡大版を実施します。
 つまり、並列に試行します。

これに対して、従来、多くの企業は直列試行をとってきました。

方法Aが駄目だったら方法B、方法Bが駄目だったら方法Cというやり方です。

 マーケティングは元々戦争(兵法)から来ていることは、前にもお話ししましたが、この直列試行は戦争では1番死人が出るとされています。だから、戦争においてこのような方法がとられることは基本的にはありません。多くの軍事ジャーナリストが予想を外すのには、おそらくこの直列試行から抜けきれないからではないか?と私は考えます。

 直列試行はみんなで一斉に、毎年同じことをやるのには(=正解がわかっている)ときにはとてもいい方法です。しかし、状況が大きく変化してしまうときには対応が難しいです。元々は農耕民族の発想です。並列試行は正解が解からないときにはとても優れた方法です。しかし確かに、状況があまり変化せず、正解が見えているときにはムダとなります。元々は狩猟民族の発想です。

 私は企業から相談を受ける際、「もういろいろやりつくした」という声をよく聞きます。多くの場合、直列試行であることが多いです。直列試行は状況が変化しているときには向かないのでやれることがどんどんとシュリンクしてしまうという性質も持ちます。要するに戦争で死人が多く出てしまった状態です。それに対して並列試行はテストによってどんどんと出来ることを増やしていくことができます。

 次回はもう少し、この並列試行、直列試行についてお話してみます。 並列試行を取り入れるだけでも、それまで「やりつくした」と思われていたものが、アイデアがわんさかと出てきます。



 



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