これまでCRMの基本セオリーに関してはみっちり学んできたので、最終回の今回は、セオリーと正反対の、非常にアナログな話をしたいと思う。とはいっても、実はCRMにおいてこのアナログな部分はとても重要なのである。
メルマガで、春は「出会いと別れ」の季節であるという話をした。 読者の方も多くの方が、ビジネスの場で「出会いと別れ」を経験していることだろう。 メルマガで「新任の上司や部下は実力的には問題無いのだが、前任者とのような『あうん』の呼吸がないので、アウトプットがあがらない。」とか、「新入社員は感情のコントロールが出来ないので、正しいことを話しても指導の効果が上がらない。」 という悩みをよく聞く旨を話した。これは実は以下のようなスタンスの差が生じていることが原因であることが多い。
例えば、暗闇の映画館で人を待っていたとする。そこへ待ち合わせの相手が駆けつけてくる。あなたは待ちくたびれていたので、駆けつけたばかりの相手の手を引っ張ってずんずん歩いていく。しかし、相手は暗闇の視界になれず、転んで怪我をしてしまうことだろう。あなたは新任の上司や部下に対して、セクションの暗黙のルール等を説明せずに押しつけていないだろうか?また、「毎日、仕事でウットウしいな。」と思っている新入社員に、「仕事が生き甲斐」のあなたの価値観を押しつけていないだろうか?
実はこれらの差はCRM成功の最大の阻害要因なのである。
1つはシステムオリエンテッドな問題。大規模なパッケージシステムを苦労して導入しても、これまでの運用体制とのギャップが大きい場合、往々にして、問題が生じ、CRM失敗への途を辿りがちである。また、データ蓄積の予測がミッションに寄り過ぎて算定されてしまっていたため、実際の蓄積との乖離が生じてしまうこと等も多い。
CRMの失敗を照明する有名なレポートとして米国ガートナー社のレポートがあるが、そこでは「55%のCRMプロジェクトが何の効果もあげていない。」と語られている。その原因を多くの識者が語っているが、その原因として語られているのは、100%このシステムオリエンテッドな問題点である。
しかし、実は、このシステムオリエンテッドな問題は、CRM成功の阻害要因の1つでしかない。 「スタンスの差」が最も顕著なのは、コミュニケーションにおいてなのである。
この時期、新任管理職やマーケティング部門への異動者に対するマーケティング研修で企業に呼ばれることが多い。その際、「僕は客の感情を読んだりするのは苦手だ。それより科学的なCRMやマイニング等のマーケティングのアプローチを学びたい。」という意見にたまに出会います。しかし、そういうスタンスでマーケティングを学んでも上手くいかない。CRMやマイニングはITではないし、理論でもない。キーになるのはコミュニケーションなのである。
最初の話にも通じるものがあるが、恋愛で上手くいかない理由によく2人の間の「テンションの差」が原因にされることがある。例えば、軽い気持ちでデートに応じた女性に対し、熱烈なアプローチをすると確実に引かれるだろう。また、自分のことを必要以上によく知っていたら恐怖さえ感じるかもしれない。
これは別段、恋愛ベタな人の話ではない。マス対応でなく個対応のコミュニケーションだからと言って、見込み客に対して、上得意のような対応をしたり、顧客情報がとれているからといって、必要以上にそれを活用しすぎてしまうのは、逆効果にしかならないのは容易に想像できるであろう。
恋愛の話ついでに、もうひとつCRMの失敗の顕著な例を1つ。 「Aさんは、思いを寄せている女性の気を引こうと、間近に迫っている彼女の誕生日に、彼女が欲しがってるヴィトンのバッグを買ってあげることを約束した。彼女の誕生日まで、何度かデートを重ねたが、彼女の誕生日のあと、連絡が途絶えてしまった。」この話を聞いて、どう思っただろう?恐らく、「Aさんは彼女を物でつるだけで、心をつかもうとしてなかったんじゃないか?」「コミュニケーションのとり方が下手だな。」等と思っただろう。
実はAさんというのは、CRMの施策の1つ、優良顧客を優遇するロイヤリティープログラムで失敗している企業の典型例なのである。(ロイヤリティープログラムというのはポイントカードや航空会社のマイレージと言えば、お分かりいただけるだろう。)これらはベネフィット訴求により、顧客の「行動」をしばる施策であるが、マイレージやポイントの償還で顧客とのリレーションが途切れてしまうことが珍しくない。これではAさんの失敗と全く同じである。リレーションやロイヤリティー形成には、ITを導入するだけでなく、コミュニケーションがいかに重要であるかの理解する良い例である。
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