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講師紹介


藤田憲一
(ふじたけんいち)

1970年生まれ。ダイレクトマーケティング広告会社、大手広告会社、シンクタンクを経て、現在(株)JMARCH取締役CEO(女性サイトとしては国内最大級の書込数を誇るコミュニティを運営)、(株)ニューズウォッチ情報事業部長(東芝、電通、三井 物産、凸版、ニューズエッジ、新規事業投資の6社のJV。ニュースクリッピング。国内2位の検索エンジンフレッシュアイの運営を行う。)、(株)NCI代表取締役社長 (テキストマイニングを用いた戦略コンサルティング事業を行う)に就任。
主要著書
驚くほどマーケティングが身につく本(中央経済)/よくわかるCRM(日刊工業新聞)/テレマティクス(日刊工業新聞)



【質問はこちらまで】
oldcolumn@bizdo.jp


■藤田憲一公式サイト■


 
■ 第25回
 テレマティクス その2
 自動車会社の環境変化
 
 

 先週、テレマティクスが「それ単体ではビジネスとしてペイしない。」と述べた。そして、そのキーになるのが「CRM」と「経験マーケティング」である、という話をした。テレマティクスの本質は、「モノが売れない時代」、「消費者が見えなくなった、理解できなくなった時代」の自動車会社の必死の試みなのである。つまり、自動車会社が顧客との関係をよりよくし、顧客に対する知見を最大化するためのビジネスなのだ。

 それはどういうことか? 1つは自動車会社の環境が大きく変わったという外部要因がある。今週はこの辺りを見て行く。

 自動車会社は完全な成熟産業である。 しかも成熟産業としての歴史は30年にも及ぶ。(ここで何を持って成熟産業というかという議論になると思うので、私は自動車が欲しいと思う人に行き渡ったと考えられる時期として、「中古車市場が新車市場を抜いた。」、「買い替え需要が新規購入需要より多くなった。」70年代を自動車産業の成熟期のスタートとして定義する。)
 市場が成熟する前の時代は作れば作るだけ売れた。需要が供給を上回り、生産は自動的に販売に繋がった。どれだけ作れたかということが重要であり、競争力とは製品開発力、生産力を意味し、販売力も質より量が重視された。

 この頃、アウトプットを上げるための生産体制の工夫が現在、世界でリスペクトされるトヨタのカンバン方式等、日本の自動車産業の強さを産んだわけである。しかし、安定成長期に入ると需要は買い替え需要にシフトしてくるので、現在所有しているものより魅力的な製品を作る必要がある。この頃、自動車会社がとった戦略が「走る」、「曲がる」、「止まる」という自動車の基本性能の高度化と、販売・マーケティング面ではそのことを前面に出して訴求する戦略である。

 80年代に入ると、自動車産業は安定成長期から成熟期に入り、「走る」、「曲がる」、「止まる」という自動車の基本性能の高度化だけでは消費者の心をとらえられなくなった。いわゆるプロダクトアウト(※1)の終焉である。 消費者の価値観が多様化、細分化し、自動車に対しても「便利さを求める人」、「快適さを求める人」、「ステータス性を求める人」等、様々なニーズに対応する必要が出てきた。この頃、自動車会社がとった戦略はそれぞれのターゲットごとに車種を用意し、それぞれのターゲットにあわせた大量の広告等の販売促進をとることであった。

 しかし、成熟化以降も90年代に入るまでは自動車産業は市場が成長してい たので、自動車会社に危機感は無かった。プロダクトアウトが終焉したといっても、完全にマーケットイン(※2)に移行していたわけではなかった。どういうことかというと、自動車会社はフルラインナップ戦略(※3)により多くの車種を用意し、満遍なく消費者のニーズを掴めるようにしていただけであった。自動車会社はその用意された多くの車種ごとにターゲットを設定し、車種ごとに最適な販売促進を行っていただけであった。つまり、販売・マーケティングを組みたてる面ではマーケット・イン的ではあったが、製品開発においては真 の意味でマーケット・インではなかったのである。

 しかし、90年代に入ると、自動車は売れなくなる。先にも述べたように自動車市場は70年代から成熟化が始まっていたのだが、ここに来て始めて成熟市場への対応ということに関して真剣にならざるえなくなったのである。

 なぜか? 市場が拡大していた頃はシェアはそのままでも売上は増加した。しかし、売上がそのまま、あるいは減少する市場においてはシェア拡大が必須になってくる。これまでシェア維持でビジネスが成り立った自動車産業においてシェア拡大は各社の死活を分けるミッションとなったのである。

 自動車会社各社はカンフル剤的効果を狙って、即時性の高い販促施策のテコ入れを行った。自動車会社各社にとっては業界内のポジショニングと市場シェアが最大関心ごとになり、大量の広告で各社の各車種の認知度を上げることが重要と考えたからだ。

 しかし、それも次第にジリ貧になる。何不自由ないほど身の回りにモノが溢れ、自動車に限らず、バブル期に「消費を学んだ」消費者は購買に関するリテラシーが上がり、「自分の生活の価値を増すもの」のみを購入するようになったのである。新製品だとか、性能が向上しただとか、広告でよく知っているといった理由ではアクションを起こさなくなったのである。

 90年代の半ば以降、その兆候は顕著になり、新規顧客獲得は難しい課題となり、そのためのコストは勢い上昇してきた。自動車会社には全く新たな戦略が求められるようになったのである。 では、新たな自動車会社の戦略とは何か?
 もうお分かりだろう。それがCRMと経験マーケティングである。次週は、この辺りについてお話をする。

※1…プロダクトアウト
 生産者側の発想のみで開発、販売する手法。より高度な商品、より安い商品を作ることをミッションとする。

※2…マーケットイン=プロダクトアウトに対比し て使われる。消費者の視点、ニーズから商品を開発すること。

※3…フルラインナップ戦略=マーケティングの基本戦略として、リーダー、つまり国内の自動車産業でいえばトヨタは市場シェアを維持していくために、オールターゲットの戦略、つまりフルラインナップ・フルカバレッジ戦略をとる必要がある。そしてそれを追う企業、つまり日産、ホンダは、差別化戦略(例えばホンダがNSXを出したり、日産がシーマを出したりすること)でリーダー企業に対抗するとともに同時にフルラインに対応し、取り残されないようにすることも必須になる。結果、上位の自動車会社は全て満遍なく消費者に対応できるラインアップをとることになった。

 

 



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