これまでのCRMに関する説明で、90年代以降の市場の変化に対し、CRMは「顧客を獲得する」というこれまでの手法から、「顧客の中から優良顧客を見つけたり、普通の顧客を優良顧客に育てる」戦略へとシフトしていることを学んできた。つまり、CRMはいわば、「いかに顧客とのコミュニケーションを効率化するか」という観点から時代の変化に対応した考え方であるわけだ。
それに対し、今週、扱う経験マーケティングは「いかに顧客の心を掴む」かという観点から時代の変化に対応した考え方であると言える。そういう意味ではこの経験マーケティングとCRMは密接な関係があり、2つの考え方が一体となって戦略の構築が為されるべきなのである。
【経験マーケティング】
ご存じのとおり、 この「経験マーケティング」という考え方は、近年、マーケティングのトレンドとして、脚光を浴びている。きっかけになったのは、P.J.パイン&J.H.ギルモアの著書「経験経済」と、広告会社・アサツーDKの顧問でもあるB.シュミットの著書「経験価値マーケティング」の両著からである。また、Webサイトのクリエイターの間では、以前から「経験」をキーワードにしてマーケティングを考えることが盛んであった。
具体的にはどういう考え方かというと、「企業はモノやサービスを売っているのでなく、モノやサービスが提供する経験を売っているのだ」という考え方である。経験による新たな価値を創造することで、企業は消費者に「感動」と「共感」を与え、価格競争によらない新たな方法で顧客を囲い込もうとするものだ。
例えば、企業のマーケティング手法も、スターバックスのように広告を一切、行なわず、顧客の来店時の経験のみでブランディング(ブランドのファンにする)する企業も現れている。彼等は時間的にも、表現の自由度にも制限のある広告でコーヒーの品質を謳っても無意味であり、コーヒーの味を含めたトータルな店舗での経験により、顧客を囲い込もうと考えているのである。
この経験マーケティングを、例えば、自動車会社にあてはめて考えると、自動車会社は自動車を売っているのではなく、その自動車によって、叶えられる経験を売っていることになる。これまで、自動車会社に限らず、メーカーはこういうCRM、経験マーケティング的な視点が欠けていた。つまり、これまでのスタンスは「売りっぱなしのビジネスをしてきた。」と言えるのではないだろうか?ちょっと、乱暴な言い方をすると、「売った後は知りませんよ。」というスタンスと言える。
そんなことを言うと、日本のメーカーに限っては欠陥、不良品、故障等の発生率は著しく低い、製品開発には多大なコストをかけているという反論もあろう。それはおっしゃる通りである。
では、「売りっぱなしのビジネス」、「売った後は知りませんよ」というのは何を指していっているのか?それはメーカーがプロダクトアウトの視点で、つまり、いかに技術の粋を集めて「品質の良いもの」を、「より安く」作ろうかという視点でのみ仕事をしてきて、売った後の顧客からのフィードバックが疎かになっていたと言うことである。特にディーラーにその辺りを任せきりになっていた自動車会社はそれが顕著である。
しかし、昨今、自動車会社が想定していたヒット車像とはことなるRV車が、彼等の予想を遙に上回るヒットを為し得たのを見て、彼等はその辺りに注力をし始めたのである。テレマティクスはそういう意味で、
・顧客とのリレーションを日々、築いていく。
・顧客の価値観、生活様式をコンテンツのニーズ等から探る
ことで為しえようとしているのだ。 また、同時にテレマティクス自体が「自動車ライフを変える」という意味で経験マーケティングの要素を多分に含んでいるのだ。
さて、来週はテレマティクスの最終回。
テレマティクスのマーケティングデータの取り込みに関してお話しする。
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