日本を代表するクリエーターで、最近はブランドに関する著書でも有名な岡康道氏が企業のブランドに対する考え方の変化を男の子と女の子に例えてこう言っている。
昔は、デートの時、自分がいかに優秀かを誇示することが大事だったが、今はなじみの喫茶店とか、近所の公園とかふたりに必然性のある場所を選び、彼女との話の中で自分の共通点を探る…と。
この辺りは10数年前の広告と今の広告を比べて、考えてもらうと容易だろう。ゴージャス感を訴求するコーヒーのCMは「癒し」を訴求し、高性能を「これでもか」とばかりに訴求する車のCMもコミカルなものに変わった。企業にとって重要なものは顧客に「共感」してもらうことであり、それがあって初めて「顧客にささる」コミュニケーションが出来るのである。先週の話を思い出していただければ、これは広告に限らず、企業のブランディング全体に関することであり、ネット・コミュニティと親和性が高い時代変化とご理解いただけるだろう。
では、共感を感じさせ、顧客にささるためにはどうすればいいのか?それを設計する上で重要なのが、「共通点」と「運命の瞬間の演出」である。これまでのような、一方的なラブコールや、伝えるだけのコミュニケーションなどは無用の長物である。共通点を設計する上で重要なのは、「絞り」と「セグメント」である。
こう聞くと、「属性」という切り口が思い浮かぶだろうが、これまで話したようにそれ以上に重要なのが、顧客のライフステージやサイコグラフィックである。(※以前のご説明をご覧になっていない方用に解説しておくと、サイコグラフィックとは、生活観や価値観といった視点での分け方である。詳しくは、バックナンバーの1月24日第8回「消費者を知る」を参照)この属性、ライフステージ、サイコグラフィック等の要素を判断基準にすることで、漠然と共通点を探るより効率的な「絞り」と「セグメント」が可能である。ネットを訪れる客はその時点では、マスでしかなく、サイトのコンセプトを明快なターゲティングでしぼり、そこで行うコミュニケーションごと(例えばコンテンツやBBS、メールのコミュニケーションごと)に「絞り」と「セグメント」を行うことで、特定多数のカスタマーへと変化させることが可能である。
この共通点をキーに顧客との接点を演出することで、「伝達だけのコミュニケーション」でこれまでのように、出来上がったものを受け取るメディアではなく、コミュニティは顧客たちが自分自身でいじれるメディアである。NOVAのCMでわけのわからないカップルの会話にNOVAうさぎが「キーッ」となっているシーンがある。「馬鹿ップル」なる言葉があるが、ビジネスのコミュニケーションと違い、コミュニケーションとは必ずしも必要事項を出来る限りシンプルに伝達するだけではない。
「私のこと嫌い?」
「嫌いじゃないよ」
「嫌いじゃないってことは好きじゃないんだ」
「好きだよ」
… |
という脈略の無い会話はその「好きだ」という事実の伝達は大して重要じゃなく、そのプロセス自体が重要である。
例えば、ある商品レビューの載っているサイトでは、ただ単にその商品がいいという評価より、やりとりされている会話自体が商品の魅力を浮かび上がらせるものである方が、消費者の購買アクションには影響するはずである。パソコン通信の時代は、主たる収益源が通信料であった。そのためユーザーの滞留時間を長くすることが重要であった。管理者はそれに応じて報酬が増えたからだ。しかし、インターネットの時代になり、それは全く何の意味もなさないものになったと言われていた。しかし、そうではない。 上記のように、取り留めの無いやりとりが重要なのである。
例えば、Jmarch社の「とくっち.Com」の例で恐縮だが、カーナビに関する意見ヒアリングを行った際、機器メーカーの方々が、これまでリサーチなどでカーナビのストレートなニーズばかりをヒアリングしがちであったため、意外と拾いきれていないニーズがあることに気付いたという声を頂いた。例えば、興味のあることや調べたいことについて「とくっち.Com」のようなコミュニティでヒアリングする場合も、「情報を詳しく知りたい。」というニーズ以上に、そこでのやり取りに価値を感じていると答えるユーザーは多い。 ここでマスとコミュニティについてまとめてみる。
【マス】
・ 広範に情報が即時に伝達
・ 知名効果=知らなかった商品を知らせる、特徴を理解させる
・ 理解促進=特徴を理解させる
【コミュニティ】
・ 共感を抱かせる。(前段階のアプローチ=共通点を見つける)
・ ブランドに対する好意の態度を形成させる(前段階のアプローチ=運命の瞬間を演出する)
広告の役割としては「○○という食品は安全」というメッセージを広く世の中に伝えることは出来る。しかし、それだけで中々、人々の認識を変えるのは難しい。「世の中で食品の安全が重視されているらしい」という認識が○○と結びつくことで初めて、それが利くのだ。
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