2.相場を張る
時は1815年ナポレオン最後の戦いになった「ワーテルローの戦い」。もしナポレオンがこの戦いに勝てば、イギリスの命運は風前の灯火となり、その国債は暴落して紙切れ同然になります。ちなみに国債とは、国が発行する借金証書のこと。風前の灯火君が発行した借金証書なんて踏み倒されそうで誰も買ってくれません。当然暴落します。反対にウェリントン将軍(歴史の授業で聞き覚えがあるはず。英国の英雄です)が勝てばイギリス国債は暴騰します。歴史はどう展開するのか?イギリス中が天下分け目の戦いの行方を凝視していたとき、ロスチャイルド家の情報網がいち早くナポレオンの敗北を伝えました。ウェリントン将軍の飛脚よりはるかに早かったのです。
「ロスチャイルド家〜ユダヤ国際財閥の興亡〜」(横山三四郎著、講談社現代新書)にはその時の様子がこう書かれています。「1815年6月19日夜遅くオステンド(現ベルギー)からウェリントンの勝利を伝えるため船に飛び乗った使いの者を20日未明、ドーバー海峡に出迎えたネイサンはただちにロンドンの証券取引所に向かった。ウェリントン将軍の飛脚よりはるかに早かった。」
ところが、ロスチャイルド家の当主ネイサンはすぐには国債の買いに走りませんでした。逆に売って出たのです。ワーテルローの前の「キャトルブラの戦い」でイギリスが負けたという情報で既に下落していた公債市場は、ネイサンが売りに出たのをみて「ワーテルローでウェリントンは破れてしまったのだ」と受け止めて大パニック!公債市場の相場は暴落に暴落を続けました。そしてワーテルロー勝利のニュースがまさに広まろうとするその時、ネイサンは今度は二束三文になった国債の買いに転じたというわけです。
横山三四郎氏の著書によれば、この“賭け”でネイサンは天文学的な数字の儲けを手にし、それがその後のロスチャイルド家の基盤となったとされます。しかし、“賭け”といってもネイサンの場合、そこには情報に裏打ちされた緻密な計算が在ります。シナリオがあります。そしてこうした“ネイサンがやってのけた賭け”こそが「相場を張る」ということなのです。
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