1.株式の売買
「この会社は去年と比較して10%増も利益が出たのに株価は下がってしまった。なぜですか」という質問をよく受けます。恐らくこの疑問は、株式投資を始めたばかりの人が必ずといっていい程ぶつかるものでしょう。この“?”を解消するヒントは、前回出てきた“期待”です。株式を買いたい人も売りたい人も将来の“期待”に基づいて株式を売買しているのです。
投資家たちが何にもとづいて期待をふくらませるかといえば、企業の将来の利益です。彼らはとりあえず、企業が発表する業績予想に基づいて、比較して、期待して、買いたい&売りたいを決めます。それが株価となって反映されるのですが、予想はあくまでも予想。実際はフタを開けたら予想以上に業績がよかったとか、急な環境悪化により予想よりもかなり悪いということだってあります。
そこで投資家たちはそのリサーチ力を駆使して、その企業の業績は本当のところはどうなるのかあれこれ予想したりして先回りしようとするのです。なぜなら、予想よりも実際の業績が良い場合、他の投資家たちが気付くよりも先にその企業の株を買っていれば、他の投資家たちが気付いて株価が上がるときに利益がとれるからです。こんな調子ですから、株式マーケットにはさまざまな情報や噂が飛び交います。
ある日A社の業績が予想よりもずっと良い数字らしいという情報が流れ、それを信じた投資家たちの買い注文によって株価が上がりはじめました。その株価の変化に気がついた投資家たちも、「何かあるな」とリサーチをかけて、どうやらA社の業績は予想の数字よりも20%もいいらしいという情報を得ます。20%もいいのなら、A社が正式に発表する前にA社の株を買っておこうということで、またしても株価は上がります。
その頃になると証券会社やセミプロの間でもA社のうわさは広まります。うわさは尾をつけて広がるものですから、当初の20%から30%増らしいという情報になっているかも知れません。A社の株価はますます上昇します。A社の株は投資家の「期待」によって買われ、上昇したのです。
いよいよ決算発表の日がやってきました。投資家たちは期待に胸をはずませながら業績発表に耳を傾けます。A社の業績は予想値よりも20%増でした。直前に流れていた情報通りです。けれどなぜか投資家たちは嬉しそうではありません。何だ。やっぱりそうなのか。もしかしたら20%以上かも知れないと期待して株を買っていたのに事前の情報通りだった。やれやれ。 その日以降、A社の株価は横ばい、しばらくして下落します。業績は予想よりも20%もアップしていたのに、なぜでしょうか。
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